法人税⑩社長さんに提案する「経営分析」!
ここまで、財務諸表の読み取り方として、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3種についてお話ししてきました。
それぞれの“意味合い”とか“見えてくる事”とか…、ご理解いただけましたでしょうか?
この話って、学校の授業のようで退屈ですよね。
ましてや、「実際に保険営業してて、そんな決算書なんて見せてもらえないし…」と思われた方も多いのではないですか?
確かに、社長さん達に向けて、いきなり「決算書見せてください」って言っても、まず見せてはもらえないでしょう。
言い方によっては怒らせてしまうかもしれませんね。
でも、皆さんの心にとめておいていただきたい“考え方”は、『提案する内容に根拠を持たすため』に、決算書が必要だということなんです。
「なんとなく1億円の保障」とか、「なんとなく年間100万円の保険料」とか、「500万円損金にするための保険料」とか…、その程度の根拠で提案していたのでは、企業経営者の皆さんの心は動かせないですよ!
また、仮にその程度の根拠で契約いただいていたとしたら、その契約の「継続性」は決して良くはならないでしょう。
ちゃんと「信頼」されて、社長さんが「納得」できて、将来に向けて「継続」できる提案、そして営業マンになっていただきたいのです。
そのためには、少々小難しくても・毎日使う知識じゃなくても、このあたりの知識はしっかりと持っておいていただきたいと思います。
では、ここまでの「財務諸表の知識」のまとめとして、「社長さんに提案する経営分析」についてお話ししましょうね。
「中小企業の経営分析」というテーマで探すと、書籍はたくさんありますし、ネットでの検索には山のようにヒットします。
ともに小難しい表現で、項目もたくさんありますから、とてもじゃないけど全部を理解して・覚えて・お話しするなんてできないでしょう。…そのレベルは顧問税理士の先生にお任せすればいいんです。
ここでは、たくさんの中から抜粋して、8項目に絞ってお話ししていきますから、頑張ってついてきてくださいね。
経営分析をする「方向」もいろいろありますが、ここでは「安全性」「収益性」「成長性」の3方向をお話しします。
★安全性
…保険提案をする皆さんにとって「この会社に提案して大丈夫なんだろうか」という観点から安全性を見ていくことは必要ですが、その前に、社長さんご自身が「自社の経営は磐石なのか」を見ていく大切な項目です。
①流動比率
“1年以内に現金化されるかどうか”で流動・固定の区別がされるわけですが、この比率を見ることで「短期的な支払能力」を見ることができます。
100%を下回ったのでは資金ショートの危険ありということにもなりますので、100%を上回って、高ければ高いほど良いということになりますね。
目安は140%以上、できれば200%レベルあると理想的です。
★収益性
…企業の歴史、規模はさまざまであっても、企業経営に共通して言えるのは「利益を追求する」姿であり、「強い利益体質」を作ることが必要です。
②売上高総利益率=売上総利益/売上高
③売上高営業利益率=営業利益/売上高
④売上高経常利益率=経常利益/売上高
⑤売上高当期利益率=当期利益/売上高
・②~④は以前にも損益計算書の見方の中でお話ししましたので、ここでは割愛します。ともに大企業の水準を理解しておくと“褒め言葉”として使えるポイントだったことを思い出してください。
⑥総資本当期利益率(ROA)
・貸借対照表と損益計算書を見て、「当期利益/総資産」が示す比率です。
これによって、事業に投入した資産が、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを見ることができます。
この数値が低いと、利益を生み出す“仕組み”に問題があるのか、事業拡大によって経営リスクが高くなっているのか…、そんな注意が必要です。
目安は1%以上、できれば5~10%であると理想的です。
★成長性
…言うまでもなく、企業は成長し続けなければなりません。後退・縮小したのでは、経営者は夢を持てません(今年のコロナのような特殊事情は別ですよ)。
経営者の物差しとして「よし!ちゃんと成長してる!」と感じられることが肝心です。
⑦売上高成長率=(当期売上高-前期売上高)/前期売上高
⑧経常利益成長率=(当期経常利益-前期経常利益)/前期経常利益
・ともに、売上・利益が前年比でどれだけ伸びているかですから、意識している社長さんは多いと思います。
経常利益だけでなく、営業利益等の成長率と比較していくと、さらに細かく課題が見えてくるかもしれませんね。
ここでご紹介したのはたったの8種です。
きちんと勉強していくと、数十種類の分析指標があることがわかるはずです。
何度も言うようですが、私たちは税理士試験を受けようとしているのではなく、日常の社長さん達との会話に深みを持たせ、提案内容の「根拠」をしっかりさせて、「信頼」を得られる営業マンにならなければなりません。
皆さんが胸をはって、堂々とこんな話・アドバイスができるようになることを願っています。