<老老相続①>「税制調査会」資料から見えること…
カレンダーもついに12月に突入、コロナコロナの一年が終わろうとしています。
いつもなら、今頃は来年の税制改正大綱が話題となり、新政権のもとでどんな舵取りがなされていくのか、そしてそこにビジネスチャンスはあるのか…、こんな騒ぎをしている頃ですね。
ところが今年は異例の一年となり、税制がどうなっていくのかなんて話題にもしにくい状況かと思います。
でも、コロナに関係なく、人は生まれ・生活し、企業は成長発展に向けた努力を続けています。
年末には個人および個人事業主の決算が行われ、各企業も決算に向かいます。コロナのために歩みを止めることはありません。
今、政治の世界ではどんな議論がなされているのか…、テレビのニュースの前に、各省庁のホームページから会議資料などをチェックしていくことは、これからの方向性を見極めていくのに大切なことです。
毎日とまでは言いません、たま~にで結構ですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
そんな中で、昨日内閣府のホームページに税制調査会資料(11/13)が開示されました(=冒頭の図)
…リンクはこちらに
https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2020/2zen4kai2.pdf
相続・贈与という、「資産移転」をテーマとし、現状そして外国との比較、さらに今後に向けた提言がなされています。
49ページにわたるボリュームがありますが、ぜひじっくりと読んでみてください。
今日は、ここから何点か、話題のネタにできそうなポイントを抜粋してご紹介します。
まず、相続税の現況を見ていくと、平成30年の死亡者は約136万人、そのうち相続税の課税対象となったのは11.6万人、率にすると8.5%だそうです。
皆さんは「基礎控除の改訂」を覚えていますか?
「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」だったのが「3,000万円+600万円×法定相続人数」に変わりましたね。“6掛け”になったわけですから、当然課税対象者は増えました。
改定前が4~5%だった課税率が、改定後は8%くらいになり、税収も1.5兆円から2兆円くらいに増えているようです。
1件あたり約1,800万円の相続税、それを2~3人で納めているということですから、単純に割り算すると、「相続人1人あたり500万円~1,000万円」というのが平均的な納付額のようです。
当然、こんな平均値で自分のことをイメージはできないですね。
我が家のこととして、①課税になるのかならないのか、②なるとしたら総額いくらくらいになるのか、③それは誰がどれくらい負担するのか…、大まかな計算は事前にしておくことをお勧めしますね。
そして私が注目したのが、世界各国との対比です。
ポイントを列記すると…、
★死亡者数はアメリカは日本の2倍ほどあるのに、相続税の課税対象件数は日本の20分の1ほど!=課税率0.2%!
★とはいっても、日本とは比べ物にならない“大金持ち”ということか、1件あたりの相続税額は日本が1,800万円に対し、アメリカは44,000万円!
★イギリスの課税率は日本の約半分、4.6%! 税収総額は日本の3分の1!
★フランスは課税率は日本の2倍と多いが、1件あたりの相続税額は日本の半分、約900万円!
★ドイツも課税率は日本の1.5倍あるが、1件あたりの相続税額は日本の3分の1、約600万円!
…どうです?
外国の相続税事情なんて考えたことなかったですが、こうしてみると、日本はなかなか厳しいと思いませんか?
“富の再分配”という、法の趣旨は理解できますが、ここまで厳しいのでは代々財産を繋いでいくという夢は持てなくなってしまいますし、「税金のために財産には手をつけずにとっておく…」なんておかしな方向にもなってしまいますね。
個人の財産総額は高いのに、貯めこんで動かない…、というのが日本の課題でもあるわけです。ただ“持ち続ける”のではなく、元気なうちから次世代に譲っていける道すじ、そして譲り受ける世代が“使える”方策、…こんな舵取りが必要なのではないでしょうかね…。
この資料に「老老相続」という、初めて見る言葉が登場しました。
ちょっとびっくりしましたが、冷静に考えると“そりゃそうだ”という内容です。
次回もこの資料から読み取れることを続けていきますね。