<相続⑫>「自筆証書遺言」とは
では、今日は「自筆証書遺言」についてご紹介します。
まず、この「自筆証書遺言」とは、名前のとおり「自分の手で書いた遺言」であるということです。
大切なのは手書きであるということであって、使われる紙や書式には制約がないということです。
「パソコンで綺麗に作って、署名欄のみ肉筆で…」なんて思いがちですが、これではダメです。最初から最後まで、日付も含めて全てを自分の手で書くんだと考えておいてください。
※ただし、財産の数が多くて「財産目録」を添付した遺言を作る場合は、「財産目録」はパソコンで作った物でもOKとなりました。
モデルとしてご紹介するとこんな感じです。
印鑑は必ずしも実印である必要はありませんが、他に偽造されないことも考えると実印のほうがベターでしょうね。
そして日付も重要です。
この自筆証書遺言、書いた後に「内容を変えたい…」と思われることもあるでしょうが、その時は“前の物を無効にする文言を書いて…”なんて考える必要はありません。
複数の遺言がある場合、「最新の日付の物」のみが有効となりますので、前の物は自動的に無効になります。
こうして、①手書きで書き・②日付を入れ・③押印した、自筆証書遺言は、基本的には自身で保管しておきます。
多くは自宅の金庫や仏壇の引き出しというところでしょうが、亡くなられた後に遺言書が見つからないのでは意味がありません。
見つけやすい場所であったり、家族に保管場所を教えておくことも必要になるかもしれませんね。
★ここで改正点。これまで自筆証書遺言の保管は“自身で”でしたが、2020年7月からは法務局で保管してもらうことができるようになりました。
破棄されてしまったり、改ざんされてしまったりする心配がありませんので、遺言者の安心感は高まりましたね。
こうして作成~保管された遺言書、遺言者が亡くなられた後に、法務局で「検認」してもらい、法的に有効な物になります。
※ここも、法務局で保管されていた物には「検認」は不要になります。
手書きで作成し、自宅で保管するぶんには費用は全くかかりませんよね。
不都合になった時も、新たな日付で書き直すだけでよいわけですから、最も手軽にできる遺言だということです。
ただし、この自筆証書遺言にも注意点があります。
・存在を気づいてもらえない危険
・紛失してしまう危険
・偽造、変造されてしまう危険
・不備があって無効になってしまう危険
…こんなところです。
法務局での保管制度を使っていけば、手間や費用はかかりますが、この心配も随分解消されますね。
あるアンケート調査によると、
★遺言を作成したことがある=約10%
★遺言を作成したいと思っている=約40%
という結果がありました。
“思ってはいるが、どうすれば良いかわからずにいる…”というのが実態なのではないでしょうか?
皆さんの日々の活動で、お客様と何かそんな会話になったときには、エンディングノート(後日解説)の作成とともに自筆証書遺言のモデル等もご紹介してください。
「そこまでしてくれるの…」と言っていただける存在になってくださいね。
では、次回は「公正証書遺言」についてです。