<相続⑪>「遺言(いごん)」を残しておけばよかった!
新型コロナウイルスが治まりきらず、さらに各地で土砂災害のニュースが続いています。
ここ広島も何度も水害にあい、今まさに私の住んでいる場所の近くも「避難指示」等でハラハラドキドキが続いています。“情報収集”は欠かさず、細心の注意をはらっていきましょう。
さて、「相続シリーズ」も11回めになりました。
前回は“相続が争族になってしまった事例”をご紹介しました。家族間で、長きにわたっての争いになるという悲劇は避けていきたいですよね。
でも、現実に相続について裁判所に“事件”として持ち込まれる件数は「年間約12,000件」もあり、直近の10年間で約2,000件も増加しています。
「でも、我が家はそんな財産持ちじゃないから心配ない…」と思ってます?
裁判所で「調停・審判」に至った案件のうち、「遺産総額1,000万円以下が32%!」さらに「1,000万円超5,000万円以下が43%!」、故に『争族の3/4は遺産5千万円以下の家族で発生している』という現実に着目してください。
つまり、もめるのは「税金のトラブル」ではなく、「お金持ち特有のこと」でもないということです。
考えられるのは…、
・不動産等、分割しにくい財産をどう分けるか…
・換金できない自社株を、誰が相続して後継者となるか…
・資金援助を受けていた兄弟がいた場合の“公平感”をどうするか…
・亡くなるまでの介護等で“寄与”した人の“納得感”はどうするか…
・離婚~再婚等で相続人が多数になっている…
…などのケースが考えられます。
いずれも、肉親間だけなら解決できるかもしれませんが、そこに個々の配偶者や知人等の他人が口を挟み、いらぬ知恵をつけだすと、治まるものも治まらなくなってしまうものです。
これでは安心してお墓の中には入れなくなってしまいます。
被相続人(故人)としては、家族がもめることなく、愛する会社等が安泰で、自身の“想い”を叶えた相続にしたいですよね。
そのための最善の方法が「遺言」を残すということなんです。
「遺言」とは、民法で細かく決められた方法に則って作成し、亡くなった後にも故人の遺志として強く尊重されるものですから、家族間の「分割協議」でもめる前に「こうしなさい…」と定めておくことで争族回避ができるわけです。
前回ご紹介した事例も、「自社株は後継者である長男に…」と遺言で残しておけば、他の3人の兄弟達も文句のつけようはなく、17年も過ぎてから訴訟に…なんてことにはならなかったでしょう。
この「遺言」、民法で「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の三種が定義されており、それぞれに「作り方・残し方」などに違いがあります。
では、明日からはこの三種を比較しながら、それぞれのメリット・デメリット等をお話ししていきましょう。