<相続③>「相続」とは…?
さあ、では今日から「相続」について始めていきましょう。
まずは、そもそも「相続とは」という点を民法にそってお話ししていきますね。
人が亡くなったとき、一般的にはこんな流れになるのではないでしょうか?
①病院で、家族に看取られて亡くなった
②親族への通知をする
③葬儀社の手配をする
④通夜・葬儀を行う
⑤故人の財産(プラスの財産・マイナスの財産)を調べる
⑥遺言の有無を調べる
⑦病院・葬儀社への支払いを済ませる
⑧遺産分割を話し合う
⑨不動産等の相続登記を済ませる
⑩相続税を支払う
…概ね、こんな感じだと思います。
①~④はあっという間ですよね。親戚の中に段取りの上手な人がいると②③④なんてところは本当に助かりますね。
…私自身、祖母・母・父とおくりましたが、ベルトコンベアに乗せられたように淡々と進んでいきました。
そして、「相続」を考えるのは⑤からです。
家・土地・預金口座・有価証券などプラスの財産がどこに・どれだけあるのか、借金等のマイナスの財産がどこに・どれだけあるのか、ここをはっきりさせるのには手間も時間もかかります。
…その間に銀行さんは「〇〇さんが亡くなった」と知ったら、基本的には口座を閉じてしまいますから、⑦等での支払いにも注意が必要ですよ。
さらに、⑥です。
きちんと遺言を残しているという方は多くはありませんが、遺品の中・弁護士さん等、遺言があるのか・ないのか…、ここがはっきりしないと⑧には進めません。
(「遺言」については別途詳しくお話ししていきます。)
結果、⑤が確定し、遺言もなかったとすると、遺族の間で⑧の「分割協議」をしなければなりません。
財産の状況、家族構成によっては、ここが一番大変なところであり、相続が争族になってしまうのもここです。
「誰が相続する」「誰がいくら相続する」「誰が何を相続する」と決めていくためには、“そもそも誰が相続の権利を持つのか”をきちんと把握しないといけませんね。
…ここも次回詳しくお話ししましょう。
幸い、争族になることもなく、円満に分割協議ができたら、その内容にしたがって⑨の相続登記、そして⑩の相続税支払いに進みます。
税の負担が、“誰がいくら”になるのか、ここもはっきりさせておかないと、“聞いてないよ~”って、またまたもめる原因にもなりますからね。
基本的には⑩まで完了させるのが「10カ月」の間にです。
「1年近くもあるんだ」と思う方もあるでしょうが、現実にはその間に法事や納骨、香典返しなどの行事に追われますので、あっという間だと思っておくべきですよ。
さらに、⑧の「分割協議」がまとまらないとどうなるでしょうか?
「決まらないんだから、税金も待って…」というわけにはいきません!
この場合には「遺産総額から計算した相続税を、とりあえず法定相続どおりと仮定して納税する」ことになります。
こうなると「税額控除」が受けられなかったり、「物納」ができなかったりと困ることにもなってしまい、さらに「調停」や「審判」を裁判所にもお願いしなければならなくなってきます。
「うちは相続税がかかるほどの財産持ちじゃないから、もめることもないよ」とおっしゃる方が多いのですが、「調停・審判」に持ち込まれている案件の75%が遺産総額5,000万円以下という、言うならば「相続税非課税案件」で争族になっているという点も注意が必要です。
つまり、「税金」でもめるのではなく、「取り分」でもめるということです。
ここは「遺言」が解決策になりますので、改めて詳しくお話ししますね。
また、亡くなられた方が中小企業経営者であり、財産の大半が自社株だというケースも注意が必要です。
会社を誰に継がせるのか…、そもそも中小企業の自社株って、どう評価されるのか…、こう考えていくと、中小企業経営者の相続はさらにさらに注意が必要になります。
「課題」ばかり沢山書いたようですが、全て大事なことになってきますので、次回以降じっくりと一つ一つ深掘りしていきましょう。