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保険営業に役立つ小ネタ集

【事業承継⑤】事業承継税制「納税猶予」を知りましょう!

 


前回に続き、会社(自社株)を“あげる”場合を考えていきます。

前回は、「毎年少しずつ贈与していく場合(暦年贈与)」と、「暦年贈与と売却の組合せ」をお話ししました。

暦年贈与については、基礎控除(110万円)を生かしていくことが肝心ですが、注意すべきなのは「計画的に・年数をかけて…」行わなければならないということです。

でも、社長さんが既に高齢という場合、“まだまだ始まったばかりなのに相続が発生してしまう…”というケースもあるでしょう。

国としても、そんなケースを考えながら、「円滑に事業承継ができるように」と考えて、税制面での特別扱いを作ってくれています。

それが「事業承継税制」です。

詳細は国税庁のパンフレットがこちらですのでごらんください。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201905/01.pdf

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広く「事業承継税制」というと、自社株の評価額をどうするかという「民法合意」も含まれるかと考えますが、今日はそこは割愛して、相続税贈与税における納税猶予」についてお話しします。

面倒くさそう…? そうですよね、税制のことですから上記のパンフレットを見ても細かな文字がいっぱいで、なかなかイメージはしにくいかと思います。

でも、皆さんのお客様である事業所にも、この税制を活用したら大きなメリットがあるという企業も多くあると思いますので、ここはしっかりと理解していってください。

 

ではまず、言葉から解きほどいていきますね。

相続税贈与税における納税猶予」ですから、「相続・贈与」どちらの場合にも使えるんだなという点、そして「納税猶予」ということは「免除」じゃないんだなという点、ここに気づいてください。

相続時・贈与時ともに使えるわけですから、現社長が亡くなった時だけでなく、事業承継を計画していこうという、まさに今も使えるということです。

逆に、誤解しちゃいけないのは「免除」じゃなくて「猶予」だということです。

税制面で優遇してもらえることには間違いないのですが、「猶予」というのは“待ってくれている”ということですから、将来は払うことになるんだなというイメージを持っておいてください。

…「猶予」が「免除」になるポイントは別途お話しします。

 

この「納税猶予」、一言で言うとこうです…。

「現社長の全株式を後継者に譲っても、贈与税は1円もかかりません!」

…いかがですか?

前回ご紹介しましたような「自社株が数億円の評価」になっている企業では、相続時も贈与時も高額な税金を覚悟しなければならないところ、全く税金かからないで後継者にバトンタッチできるわけです。

「そんなうまい話には落とし穴が…」と考えちゃいますよね。

ここで理解しておかなければならないのは、「落とし穴」ではないものの「注意点」が何点かあるということです。

この優遇措置を受けるためには…、

①中小企業であること

②代表者であった現経営者から、代表者である後継者への贈与であること

③令和5年3月末までに「計画書」に基づいて県知事の承認を得ておくこと

…が必要です。

「あれ?、従業員の数を減らしちゃいけないとか、他にも面倒くさい条件があったはず…」と思われた方もあるかな?

そうなんです、以前はこうした条件がまだまだ複数あったのですが、この「条件あり」を「一般措置」と位置付けて、「条件を大きく緩和した」扱いを「特例措置」として加えた形にしたのが今現在なんです。

…お役所のやりそうなことですね、言い回しは複雑になりましたが、要は「特例」をちゃんと理解すればOKです。

 

結果的に、この「納税猶予」を、親⇒子⇒孫…というように代々続けていけば、何代承継しても税金かからないままで会社を引き継いでいけるのですから、私はとっても良い制度(特例)を設けてくれたと考えています。

 

なのに、実はこの制度、あまり使われていません。

なぜ? 考えられる理由は二つ、一つは「まだみなさんよくご存知ない」ということ、そしてもう一つは「税理士さんが勧めない」ということです。

税理士さんが乗り気でないのは、「納税猶予されていることを、いつまでも覚えておかなければならない」のが面倒だということのようです。

この税制を活用するためには、顧問税理士さんを味方にすることは必須ですから、壁は分厚いかもしれませんが、会社を経営しているのは社長さんであり税理士さんではありません。

現社長がじっくりと考えて、自社での活用メリットをしっかりと相談していく姿勢が大切だと思います。

そして、皆さんが税理士さんと対決することではなく、社長さんに向けて「こんな方法もありますがご存知ですか?」という情報提供の立ち位置であることも間違えないでくださいね。

次回も、もう少しこの「納税猶予」に関して掘り下げていきます。