FPの小ネタ

保険営業に役立つ小ネタ集

【号外編】社長が「認知症」、放っておいたら手も足もでなくなってしまいますよ!

ずいぶんと久しく記事を書いておりませんでした。ごめんなさい。。

ここまで書き続けてきました事も、税・社会保険の“数値”が変わっている部分がありますので、改めて修正版にしていかなきゃな~と思いつつ、日々忙殺されているというのが言い訳です。

 

…と言いながら、昨今多くの皆さんが認知症の心配をされており、特に中小企業オーナー経営者の皆さんにとっての心配は、号外編にして書かなきゃなという思いでパソコンに向かいました。

認知症とは…」・「中小企業経営者とは…」という点は皆さんご存知のことと判断し、今日は『中小企業経営者だからこそ、認知症を軽く考えていたら大変!』という視点で書いていきます。

しっかりと読みとっていただき、皆さんの大切なお客様である社長さん達に、「認知症になったら、「何ができなくなり…」「そのためにどう困る」のかをしっかりとお話しできるようになってください。

 そこが曖昧だと、「今持っている保険で充分…」ということにもなり、備えをご提案していく『意義』は伝わりません。

 

 まず最初に、「社長の仕事」を改めて整理しておきますね。

社長の仕事は大きく3つ、・決定・行動・責任 …です。

【決定】とは、事業運営に関わる全てのこと“決める”権限を持つということです。社内の「人事」・社外との「契約」・経営上の「資金調達」など、決めるべきことは毎日あります。

【行動】とは、まさに日々の経営です。上記で“決めた”ことも、日々軌道修正をし実行していかなければなりません。そして、社長は会社のトップ営業マンです。社長が率先して引っ張っている会社は、その“空気”が浸透し従業員の手本となっていきます。

【責任】とは、最終的には社長が全ての責任を負うということです。取引先・顧客・法律上…、全方面に対する責任であり、他の人にはできないことです。

 

 では、企業(特に中小企業)では、どのように毎日が進んでいるでしょうか。

会社のお金の流れは、仕入れるためのお金・会社を維持するためのお金(人件費等)を支出し、作り出した製品を売る(サービスも製品として)ことで得る売上との差額、即ち利益を求めて毎日・毎年の経営を進めていきますが、このお金の流れには必ずタイムラグが生じます

売掛金」「買掛金」などがそれにあたるのですが、実際のキャッシュがなくても期日までに支払わなければならないことが生じます。

 そんなとき社長はどうしているか…、とりあえず自身(個人)の資金を会社に貸したことにして支払い、後日の売上等から精算するわけです。

 この行為は会社勤めをしていると、なかなかイメージできないことです。

「現実には清算できず、“社長借入金”が累積で数千万円になっている…」なんてこともざらにあります

 この現実と、認知症になったときの影響をしっかりとお話しできなければなりません。

 

 認知症には軽度・中等度・重度と段階があり、「軽度」のうちは自己の判断でお金を動かすことはできます。社長が判断した取引は有効ですし、代表取締役であり続けることも問題ありません。

 ところが、これが「中等度・重度」となってくると問題が生じます。

 まず、銀行は社長が認知症になったというニュースを知ると注意信号を灯します

すぐに融資回収などということはしませんが、特に個人口座の取引を“どこまで”扱うかに慎重になります

 そして、「自身の判断が困難」な状況だと判断したら、銀行側から口座の凍結を行います。こうなると、家族であっても預金の引き出しはできなくなり、前述のように“とりあえず個人資金で埋める”ということができなくなってしまいます。

 家族としては困ってしまい、なんとかする方法はないのかと銀行に尋ねると、成年後見をたててください」と言われます。

成年後見人には「任意」「法定」の2種がありますが、このように本人の判断能力がなくなってからでは、裁判所に頼んで法定後見人をたてることになります。

成年後見人は、裁判所が弁護士・司法書士等から選任し、その仕事は「個人の財産保護」に徹します

当然個人の財産を会社の支払いにつぎ込むことは難しくなるわけです

 

 さらに、成年後見人の影響はもう一つあります。

 前述の状況で「被後見人」になってしまうと、現社長は代表取締役」を続けることは法律上もできなくなります

そうすると会社は代表取締役の解任と選任を行うわけですが、一般的に中小企業では社長がほぼ全ての自社株を持っており、それはすなわち「個人の財産」ですから、現社長の解任~新社長の選任という決議にも成年後見人が登場することになります。

それまで家族内の取締役会で決めていたことに、他人である後見人が入ってくるわけですから簡単には進められなくなってしまいます。

 そんなことでモタモタしているうちに「あの人が社長だから…」と安心していた取引先・従業員・金融機関は動揺し、結果的に経営が立ち行かなくなってしまうリスクが生じます。

 

 また、例えば「10年後を目途に息子に事業承継をする…」というように考えていた社長だとすると、突然訪れた事業承継に対しての準備がまだできていないでしょう。

後継者である息子は、事業を継ぐ“意思”はあっても、自社株の譲渡(贈与含めて)のための資金はできていないでしょう。

 そんなときに、認知症という診断の時点で会社にまとまった“お金”が入ってくれば、①日常の運転資金②役員退職慰労金「自社株の買取り」資金というように、幅広く“使える”お金ができるわけです。

事業承継についても、軽度だからといって後回しにするのではなく、「進行する前に手を打っていく…」という判断が肝心です。

 

 これまで、生命保険で備えていられたのは「死亡」の時でした。死亡保険金を財源にして前述の資金にしていたわけですが、これだけでは“死亡していない”認知症時点では使うことができません

 

 これがまさに『会社で認知症保険を持つ』ことの意義です。

これから多くの生命保険会社が「認知症保険の法人契約」という道に入ってくると思います。

くどいようですが、皆さんが欠かせないのは「社長が認知症になったら、会社は何が困るのか…」をしっかりとお話しできるようになることです!