【事業承継⑦】会社(自社株)を「売る」場合
事業承継の大きな道すじ、「あげる」のか「売る」のか…、これまでは「あげる」場合の税制や注意点をお話ししてきました。
「あげる」ということは、現社長の手元に「お金」が入ってくるものではありませんから、これは息子さん・娘さん等が後継者になる場合でしょうね。
これが、近い親族に適当な人がおらず、親戚とか従業員が後継者になるという場合はどうでしょう。
さすがに他人さんにとなると「あげる」という選択は厳しいでしょうね。
現社長が永年頑張って大きくしてきた会社、社長にとっての最大の財産ですから、引退後の生活のためにも、それなりの金額で「売る」という道に進みたいでしょう。
仮に、1,000万円の資本金でスタートした会社、今では自社株の評価が10,000万円になっているとします。
そこに、従業員として一生懸命務めて、社内での人望も厚く、後継社長として頑張っていきたいという意欲も持っているBさんがいるとします。
会社・従業員・取引先・顧客、全ての方面からしてもこれがベストな事業承継だとしても、越えなければならない大きな壁として、“買取資金”という問題が生じます。
例のように「評価10,000万円」だとすると、これだけ大きな資金を一般従業員であるBさんが準備するのは簡単ではありません。
現社長(Aさん)のやさしさで“安く”しすぎると、評価額との差額を「贈与」したととられてしまう危険もありますから、やはり評価額相当で売る・買うを行うべきです。
Bさんが個人で資金調達をして「買う」という方法を考えるのであれば、日本政策金融公庫に相談してみてください。事業承継目的として優遇された融資制度もあります。
…下図は中小企業庁のホームページにある冊子です。
こんな物を参考にしながら、まずは日本政策金融公庫・県の商工労働部・商工会議所などに相談してみるのが良いかと思います。
でも、やはり「10,000万円という高額」の借金を背負うというのは大変なことですよね。
そこで、もう一つこんな方法はどうでしょう。
これは、Bさんが新しい会社(資本金は少額で結構です)を作り、Aさんはこの新会社に対して持株を売ります。
新会社はそのために金融機関から融資を受けるわけですが、現在のA社を完全子会社とするわけですからA社の経営が順調であれば大丈夫でしょう。
結果的に、Bさんは少額でA社の実質的経営者となることができ、以降はA社の株式配当をB社が受け、その配当をもとにB社は借金返済をしていきます。
図にするとこうです…。
「持株会社なんて、都会の大企業のこと…」と思われるかもしれませんがそんなことはありません。
今は地方でも・中小企業でも、事業承継の方策の一つとして多く使われている方法です。
この方式で注意すべきポイントは…、
①既存事業会社は安定した収益力があり、持株会社に対して配当が可能であること
②持株会社は、正しく算定された「時価」で、現社長から買い取ること
③持株会社に資金調達能力があること
④顧問税理士・商工会議所等が、頼りになる相談相手があること
…でしょうか。
それでも、家族・親族・従業員から後継者が作れない場合にどうしましょう…。
そうなると考えるべきは「M&A」です。
ということで、次回は「M&A」についてお話ししていきましょう。