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【事業承継⑥】「納税猶予」の注意点!

 


昨日、「相続税贈与税における自社株の納税猶予」についてお話ししました。

まだまだ利用者は多くはありませんが、“上手な事業承継への選択肢の一つ”としてご紹介はしていっていただきたいと思います。

今日は、従前からの「一般措置」と追加された「特例措置」の違い、そして利用時の注意点を列記しておきます。

 

★「一般措置」と「特例措置」の違い

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「一般措置」では全部の株式を対象とすることはできませんでした。上の表のとおり、総株式数の3分の2までという制限がありましたが、「特例措置」ではこの制限が撤廃されて全株式までを対象とすることができます。

 

「一般措置」では、「承継後5年間は、従業員数を8割維持しなければならない」という要件がありました。この雇用維持要件、「特例措置」でも残ってはいますが、商工会議所等の経営指導を受けていくなどの策を講じることで、「弾力化」の表現のとおり事実上の撤廃となりました。

 

「一般措置」では「1対1」(…現社長から後継者1人)にしか認められませんでしたが、「特例措置」では「複数の株主から最大3人の後継者」の場合にも使えるようになりました。

 

「一般措置」では相続人にしか使えず、他人が後継者の場合には使えませんでしたが、「特例措置」では「後継者が相続人でない場合」にも使えるようになりました。

 

…まとめて言うと、「多くの要件が壁になっていた」のが、「壁が撤廃されて100%使えるようになった」ということです。

これをもって「自社株の相続・贈与問題は完全になくなった」と言っても過言ではないくらいだと思います。

 

ただし、注意しなければならない点もあります。

 

★利用時の注意点

「特例措置」を受けるためには、令和5年3月31日までに県知事の承認を得ておかなければなりません。そのうえで、令和9年12月31日までに事業承継を実行しなければ「特例措置」を受けることはできなくなります。

県知事の承認を受けるための方法は、税理士・商工会議所・商工会に相談してください。

この「期限」については、今後の税制改正で延長される可能性もありますが、現時点では上記のとおりですので注意してください。

 

対象は「中小企業」でなければなりません。規模が大きくなって「中小企業」でなくなったり、上場企業となると対象にはなれません。

また、「風俗営業会社」や「資産管理会社」は対象になれません。

 

「特例措置」によって継続要件は緩和されましたが、後継者がその後に株式を売却したりすると、猶予されていた贈与税利子税まで上乗せされて求められる場合も生じます。

親⇒子⇒孫…と、代々引き継いでいくのであれば何の問題もないのですが、何が起きるかわからないのが企業経営です。

「猶予してもらえなくなるケース」については、税理士・商工会議所・商工会等から教えてもらい、しっかりと覚えておかなければなりません。

 

この「事業承継税制」は、毎年の税制改正で注目されるポイントであり、直近では「個人事業」でも同様な優遇措置が加わりました。

今後も、追加・改正・延長などの“手”が加わっていくといくと思われますので、そんなニュースには注意していきましょうね。