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保険営業に役立つ小ネタ集

<相続⑱>“安易な生前贈与”にはご注意を!

「相続」シリーズの応用編として、今日は「贈与」、特に「生前贈与」についてお話しします。

というのも、贈与税というのは相続税の一部というような位置づけであり、実際に相続対策(分割対策)を考える際には、生前贈与というのは効果的な策ですからね

 

これもまた、実際の事例をもとにお話ししていきます。

今日の事例は、私自身が“効果的生前贈与”についてのアドバイスを求められ、複数年にわたっての生前贈与をご提案し、採用いただいた方法のご紹介です。

 

<家族構成>

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・Aさん(80代)は企業経営者、健康。

・後継者は次男のDさん、既に専務として活躍中。

・Cさん、Eさんは自身の仕事を持ち、遠方に居住。

・7人の孫F~Lは0歳~7歳

 

<Aさんの希望>

子、孫10人に、総額5,000万円を生前贈与したい

・孫達には、進学時程度まで途中で使ってしまうことのないようにしてほしい

税制面で、出来る限り効果的な方法にしてほしい

 

…ということでした。

複数回のやりとりはありましたが、途中は省略して、最終策はこうなりました。

★基本は「500万円×10人=5,000万円」

★500万円を3年度に分けて(約170万円)贈与する

★孫への贈与分は、20年満期の変額保険(月払)保険料口座に積み立てる

 

この提案、意図はこうです。

贈与税の非課税部分(110万円)をあえて上回り、最低税率(10%)である310万円までの贈与にする。

・故に、3年度に渡って「贈与契約書」を結び、贈与税申告することで税務当局へのエビデンスを残していく。

・孫達の変額保険は、20年分の保険料を3年で口座に作ることで、仮に途中で使わざるを得ない事が生じた場合も、“解約払戻金+口座残額”で安定的に対応できる。

・変額保険はあえて「月払い」とし、ドルコスト平均法の効果を得る。

 

Aさんにも快諾いただき、採用となったのですが、最終段階でちょっとした“壁”がありました。

というのは、Aさんとしては税務を簡単に考えていらしたので、「形式上はこうしても、口座や印鑑の管理は自分の手元に…」なんて思われていました。

でもそれではダメです。

通帳・印鑑がAさんの手元にあるのでは贈与したことにならず、これが税務署にばれてしまうと大変なことになってしまいます。

何度もAさんにご説明し、なんとかご納得をいただき、「個々の新規口座作成」「個々の新規印鑑作成」をCDEさん同席のもとで行いました。

CEさんご家族は遠方に住まわれていましたので、お正月の帰省にあわせて時間を設けていただき、個々にも“Aさんの思い”や、“保険内容”・“今後の注意点”などをご理解いただきました。

 

皆さんに覚えておいていただきたいのは、最後の注意点です。

税務上、安易に考えられているお客様は多く、通帳・印鑑の管理は自分が…と思われています。

そこを知り得たときは、“聞かなかったことにしよう…”なんて考えず、しっかりと正しい扱いをアドバイスしてあげてください

ムッとされる瞬間もあるでしょうけど、それが最終的にはお客様のためですからね。

 

 この事例は変額保険で行いましたが、ここに「教育資金一括贈与」とか「積立NISA」をからめていくことも一考です。

お客様の“思い”を最優先し、「気がつくと違う方向に向かっていた」なんてことにならないよう、皆さん自身がブレないでくださいね