<相続⑰>あれ? 先祖代々の土地はどこにいく?
“遺言の大切さ”についてお話しを続けていますが、以前某地でセミナーをさせていただきました際、参加されていた中小企業経営者の方が、「翌日すぐに公証人役場に相談に行ったよ」と言われた事例をご紹介しましょうね。
まず、家族構成がこんな感じ…
事例とする社長さんがA男さんです。
・A男さんは、現在B子・E子さんとともに、先祖代々の土地建物に住みながら、会社を経営されています。
・A男さんとB子さんには子供はいません。
・A男さんには、離婚したC子さんとの間にD男さんという子供がありますが、遠方に住んでおり、交流はありません。
この場合、これからA男さんが亡くなった際には、相続はどうなりますか?
…言うまでもなく、B子さんとD男君が相続人となりますね。
A男さんもここは充分理解されており、「B子さんとE子さんの生活のために、住んでいる土地建物はB子さんに相続させ、D男君にはお金を渡す…」旨を考えられていました。
こんなケース、決してレアケースではないと思いますし、A男さんの思いも当然でしょう。そしてこの遺産分割の時点では、B子さんもD男君も異論はないのではないでしょうか。
ところが、考えてほしいのはその次の段階です。
上記のとおりの相続をして、その先の“二次相続”を考えてみてください。
B子さんはE子さんの養子になっているわけでもないので、戸籍上互いの相続関係はないですね。
A男さんとの間に子供もいませんから、B子さんが亡くなった際にはF子さん・G男さんという「××家系」の人が相続することになります。
「〇〇家系」で先祖代々から受け継いできた土地建物(この事例では農地山林もありました)が、気が付くと「××家系」の物になっていくわけです。
A社長は、そもそもセミナーに来られた際には自社株のこととか事業承継のことを心配されていたのですが、落ち着いて考えたら上記のとおり別の課題があることにビックリされました。
この課題を解決するためにはどうします?
今現在はA男さんもB子さんも、皆さん元気な状態ですから、直近で問題になることではありません。
A男さんの意思を明確にして、D男君のこれからをどうするのか、「〇〇家系」で不動産を継いでいく人は作れないか、その際にB子さん・E子さんの生活基盤は維持できるか、「〇〇家系」と「××家系」でもめないようにするにはどうすればいいのか…、こんなことを遺言として残しておけばいいですよね。
“この家族だけの問題”と思わないでください。
皆さんのお客様にも、いろんなケースで何がしかの課題があるという方は多いと思います。
今が元気だからといって、何も手をつけないままでいると、将来親戚家族が大変なトラブルを抱えてしまうことにもなりかねません。
皆さんの日々の活動の中で、モデルケースとして教えてあげていただきたいのです。
だからといって保険契約に直結するものではないかもしれませんが、幅広い情報提供を重ねることで、信頼できるアドバイザーになっていってください。