<相続⑯>「遺留分」に注意して!
相続シリーズも16回目になりました。
ここまで「相続を争族にしないためには遺言を…」とお話ししてきましたが、ここで忘れてはいけないのが「遺留分」です。
「遺留分」とは、柔らかく言うと「一定の相続人には、遺言に勝る権利を法律が認めている」ということです。
つまり、「財産は全て〇〇に…」なんて遺言を残したとしても、必ずしもその通りにはならないということです。
なので、遺言を残す際には…、
★自分が死んだときの遺留分権利者は誰なのか…
★書いた遺言の内容では、遺留分まで踏み込んでいないか…
…等を考えたうえで作る必要があります。
ではまず、「遺留分権利者」とは誰なのか…、ここからお話しします。
法律用語で言うと、「遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人である」ということです。
つまり、配偶者・親等の直系尊属・子等の直系卑属ということです。
重要ポイントとして、
①兄弟姉妹には遺留分はない!
②相続放棄をした人は、そもそも相続人ではないという扱いになるので遺留分はなく、その人の子も遺留分の代襲相続はない!
…は覚えておいてください。
そして、この遺留分は「権利」ですので、たとえ遺留分権利者であっても、自身が権利行使として「請求」しなければ成立しません。
(そのために、下記のとおり「時効」も定められています)
具体例として見ていきましょう。
<例>母が死亡し、遺言で「遺産1億円は全て長男A(同居)に相続させる」と残していました。既に父は他界しており、母の法定相続人は長男Aと次男B(別居)の2人でした。
…この場合、次男Bは、長男Aに対し「遺留分侵害額請求」をすることができ、その計算は…、
★相続人は息子2人という卑属なので、遺産の1/2(=5,000万円)は遺言どおりにはならず、法定相続割合に則らなければならない。
★法定相続は2人の兄弟が1/2づつなので、Bは5,000万円×1/2=2,500万円の権利を持つ
★故に、BがAに請求することで、相続した10,000万円のうち2,500万円は、遺留分として渡さなければならない。
…となります。
ここで、「遺留分侵害額請求」という言葉を使いましたが、“あれ?「遺留分減殺請求」じゃなかってっけ?”と思われた方もあるのではないですか?
これは、昨年(2019.7.1)から変わっていることなんですが、以前の「減殺請求」では、権利分として不動産を共有名義にしたりと、“物”の指定ありませんでした。
ところが、今は“お金”として支払わなければならないようになり、このため呼び方も「遺留分侵害額請求」となったわけです。
では、遺留分権利者からの「請求方法」と「時効」についてお話ししておきますね。
<方法>
①請求する=口頭・文書どちらでもかまいませんが、後述の「時効」の時計を止めるためにも「内容証明郵便」で請求するのがよいでしょう。
②合意する=双方で合意して「遺留分侵害額についての合意書」を作成します。
③合意に至らない場合、家庭裁判所に「調停」を求めます。
④「調停」でもまとまらない場合、「訴訟」に至ります。
<時効>
★「遺留分侵害を知った日から1年以内」に請求しなければ、権利は効力を失います。
★知らないまま「相続開始から10年」が経過すると、権利は効力を失います。
…堅苦しい話が続きましたが、要は「愛する家族がもめないようにする」ことが目的なのですから、よ~く考えて、“遺留分までを考慮した遺言”を残しておくことが肝心ですね。