FPの小ネタ

保険営業に役立つ小ネタ集

<相続⑧>相続税計算の「仕組み」を知る!

8回目となりました「相続」シリーズ、ここから相続税」が計算され、納税されるまでの仕組みとか手順についてお話しします。

まず今日は、相続税計算の仕組み」です。

 

誰かが亡くなり、残された遺産に対しての税を考えるとき、コインの表裏のように「亡くなった人がどれだけの財産を残したか…」という側面と、「誰がどれだけの財産を相続したか…」という、二つの側面が考えられますね。

言い換えると、「死んだ人」から見るか、「受けた人」から見るか、…です。

この課税方式を、前者は「遺産課税方式」後者は「遺産取得課税方式」などと言われることもありますが、日本の相続税の仕組みはどちらなのかと言うと「両方式の複合方式」という表現になるでしょう。

これでみなさん「あちゃ~、めんどくさそう~!」って思われるでしょうね。

…そうなんです。

頭の良い皆さんが考えられたのでしょうが、“右から考え始めたことを進めていって、最終的には左の考えにもはめ込む…”と言うような、複雑な仕組みになっています。

でも、だからと言って、この仕組みに文句をつけてもしょうがありません。法律と言うルールで定めているわけですから、落ち着いてこの仕組みを理解し、定められた手順を間違えることなく踏んでいかなければなりません。

(ちなみに、この「複合方式」を取り入れているのは日本だけ。諸外国は“受けた人”から見ていく「遺産取得課税方式」が主流だそうですね。)

 

では、この仕組みと手順をお話ししていきます。

 

まず最初にやることは、「①残された財産は、総額でどれだけあるのか」を明確にするステップです。

この段階では、多岐にわたる財産に「非課税部分」があるものが沢山ありますので、まずはこの一つ一つを計算していきます。

そして次に、「②時間的に遡って加算しなければならないもの」を明確にします。…「生前贈与分は、3年分遡る」というのがここですね。

①で一つ一つの足し算を計算し、そこに②を加算することで、遺産の「総額」が明らかになりました

次は、そこからの引き算です。

前回までにもお話ししました基礎控除がここですね。

基礎控除3,000万円+(600万円×法定相続人数)です。

①②で計算された遺産総額から基礎控除を引くことで「③課税遺産総額」が計算されます。

そして、この課税遺産総額を基に、「法定相続どおりだったら、誰がいくら相続するか…」という仮定の計算をし、そこから「④相続税総額」を計算してしまいます。

…賢い皆さんなら、もうご理解いただけますね。ここまでは、「現実に誰がいくら相続したか」を無視して、相続財産の全体感から「税総額」まで計算しちゃうわけです。

そう、ここまでは「遺産課税方式」ですね。

 

そしてここから「遺産取得課税方式」にバトンタッチします。

現実に、誰が・いくら相続したかの「割合」を計算して、この割合に応じて④で計算された相続税総額を分担するわけです。

これで“複合方式”となるわけですが、最後に、個々に計算された相続税から「配偶者の税額軽減」や、「未成年者控除」を差し引いて、「最終的な個々の納税額」が計算されるという仕組みです。

 

…これを上から下へ、図で表したのがこちらです。

f:id:takamisan:20200626170049p:plain

 

いかがですか?

この仕組み・手順に則るためには、「財産個々の評価(非課税部分含めて)」ができ、「法定相続のルール」を理解した後に、個別の按分をして、最後の「税額控除」も知っておかなければなりませんね。

なので、申し上げたいのは“断片的に理解”していたのではダメだということです。

一つ一つのステップを間違えず、さらにその順番も間違えないことで、ちゃんとした相続税の試算ができるわけです。

…実際にお客様へのアドバイスのためにはもちろんですし、各種試験を受験する際にも、この計算がきちんとできることは不可欠です。