所得税④「医療費控除」and「セルフメディケーション控除」
今日は所得税計算における「医療費控除」、そしてその特例である「セルフメディケーション控除」についてお話ししますね。
ともに「所得控除」ですから、課税対象となる額を減らすことができ、「控除額×税率」分は税の節約になるというものです。
ではまず、「医療費控除」について。
この控除はずいぶん以前からありますから、ご存知の方は多いと思います。
ただ、「そこまで使ってないし…」「年間でいくらになったか覚えてないし…」とか「面倒くさいし…」という理由で使われていない方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
でも、せっかくの税制優遇制度ですから、面倒くさいなんて言わないで、使えるものは使うべきですよ。
この控除、簡単にまとめると…、
★1年間(暦上の)に支払った医療費が10万円を超える
★この医療費は1人じゃなくても、世帯の合計でOK
★控除される額は10万円を超える部分、ただし200万円限度
★生命保険からの給付は差し引いて計算する
…というものです。
「年間10万円」というと大きな額ではありますが、病院の窓口で支払うものだけでなく、薬の購入・交通費なども対象になる部分がありますし、「世帯(仕送りで生活している別居の学生もOK)」ですので、年によってはオーバーすることもあるのではないですか?
控除の対象になるものと・ならないものを表にまとめましたのでご覧ください。
そして、この「医療費控除」に特例として加わったのが「セルフメディケーション控除」です。
日本では、“高齢化による医療費の増大”が問題だということはご存知だと思いますが、
この特例、ちょっと乱暴な言い方をすると、「ちょっと調子が悪い程度なら、病院にすぐ行くんじゃなくて、自分で薬で治してね」というところでしょうか、その分税制面で優遇してあげるからという制度です。
「医療費控除」が「年間10万円以上」であるのに対し、「セルフメディケーション控除」は「年間12,000円以上」で対象になりますから、より身近なものと言えるかもしれませんね。
ただし、この「セルフメディケーション控除」も、薬なら何でもOKということではなく、厚生労働省が定める「特定一般用医薬品(スイッチOTC医薬品)」でなければなりません。
詳しくはドラッグストアで聞いていただきたいのですが、目印となるマークがこちらです。
さらに、注意点として…、
★この特例は、2021年12月末までの期限付き(延長される可能性もある?)
★「医療費控除」との選択
…という点があります。
「選択」となると、またまた面倒くさい感じですが、例で示すとこうなります。
<Aさん宅>
医療費・セルフメディケーション医薬品ともに基準額未満なので控除なし
<Bさん宅>
医療費控除は基準額未満なので対象にならないが、医薬品はオーバーした18,000円
が控除される
<Cさん宅>
ともに基準額を超えているが、医療費控除のほうがオーバー分大きいので50,000円控除
<Dさん宅>
ともに基準額を超えているが、医薬品のほうがオーバー分大きいので58,000円控除
…となります。
Bさん・Dさん宅にとっては、これまでよりも所得控除が大きくなり、結果として納める税金が少なくてすむわけですから、医療費のかかった家計には助けとなりますね。
仕組みとポイントだけ簡単に書きましたが、申告の際に注意しなければならない点もありますので、詳しくは国税庁のホームページ等で確認してください。