所得税③「給与所得控除👇」VS「基礎控除👆」
前回は「個人事業主(=事業所得)にとっての必要経費」についてお話ししました。
経費となるものを一表にしましたが、スマホ画面ではなんとも読めない大きさになってしまいましたね。ごめんなさい。
特に小さくなってしまった「備考欄」は、経費になる・ならないの注意点でした。
恐れ入りますが、親指と人差し指でグイッと拡大してみてくださいね。
では、今日は「サラリーマンにとっての給与所得控除」、併せて「基礎控除」についてお話しします。
事業所得である個人事業主は、毎日細かく細かく経費の領収書を重ね、一年の総決算として確定申告に臨んでいますね。
そりゃ、落とせるか・落とせないかで納める税金が変わってくるわけですから必死になるのも当然です。
逆に、給与所得であるサラリーマンの皆さんはどうですか?
毎年秋になると会社から用紙が配られ、「いついつまでに印鑑押して、控除証明書と一緒に提出してください」って求められますね。
そして生命保険料の控除証明書など、郵送で送られてきている物を集めて追記して提出するわけですが、それでも「面倒くさいな~」って思ってません?
だとしたら、とんでもないですよ! 事業所得者の確定申告書を作る作業とは比べ物にならないくらいに簡単なものですから、面倒くさいなんて言ったら怒られますよ。
ただ、その反面、「経費」という観点がわかる方は、「私はもっと経費つかっているんだけどな~」って思っているケースもあるかもしれませんね。
そう、給与所得者は実際の経費を積み重ねて計算するのではなく、「ざっくりこれくらいは経費として見てあげます」という計算がされており、これが「給与所得控除」ということなんです。
例えば500万円の年収だとすると、「500万円×20%+54万円=154万円」が収入から引き算されて所得税計算されていました。“ざっくり3割程度”が経費として差し引かれていたということですね。
「私は仕事用のスーツとか、交際費を考えると3割どころじゃない!」と言う方も、給与所得者にとっては仕方のないこと、皆さん同じ計算方法で控除額が決められていくわけです。
ここまではさほど難しい話ではないのですが、今年(令和2年)から、この給与所得控除の計算方法が改正され、「10万円」も下がってしまうんです!
控除が10万円少なくなるということは、所得税率20%の人にとっては2万円も所得税が大きくなるということですから、“これは大変”となる話です。
「え~!増税なの?」って思われた方、実は安心してください。
簡単に言うと「給与所得控除が10万円少なくなり、そのかわりに基礎控除が10万円増える」というのが今年の税制改正です。
私たちの所得税計算では、“収入からいろいろの所得控除を引き算して所得を計算する”とお話ししてきましたね。
給与所得控除・基礎控除ともに所得控除ですから、+10万円と-10万円で結果としては今までと同じということになるわけです。
「だったら、税制改正する意味ないじゃん」と思われました?
よく考えてくださいね。
給与所得控除はサラリーマンにとっての経費でしたね。それに対し基礎控除は給与所得者も事業所得者もみんなが受けるものです。ということは、給与所得者全体にとっては「今までと同じ」、事業所得者にとっては「今までより減税」ということになりますね。
ただし、もう少し注意は必要です。
下記に新旧の給与所得控除・基礎控除を表にしましたが、「高額所得者にとっては、給与所得者も事業所得者も増税になる」ということです。
例えば…、
・年収850万円以上のサラリーマンにとっては基礎控除のアップ額よりも給与所得控除のダウン額のほうが大きい!
・年収2,400万円超のサラリーマン(現実には中小企業経営者)にとっては基礎控除も給与所得控除も両方ダウン!
・年収2,500万円超のサラリーマン(現実には中小企業経営者)にとっては基礎控除は無くなる!
…ということです。
まあ、年収850万円超のサラリーマンというと限られた方々ですから「プラマイゼロ」の方が大半となりますので、それほど文句はでないわけですが、皆さんのお客様である中小企業経営者・役員という皆さんにとっては「増税」になるということが理解できましたか?
…となると、こんな提案をしたくなりませんか?
「社長さん・専務さんにとっては、このままだと増税ですね。ならば、増税になる分かれ目まで役員報酬を下げて、その分役員退職金の準備を手厚くされてはどうですか?」…と。
子供さんの教育費等が大きくかかる層には難しいかもしれませんし、少々下げても増税に変わりないという方も多いでしょうが、「今の生活を維持することを線に考えたら役員報酬もある程度下げられる」という方ならば通用する話ですね。
税制は毎年どこかが改正になりますから、
・何が、どう変わるのか…
・誰に、どんな影響が生じるのか…
・ならば、どんな工夫(脱税はダメですよ)ができるのか…
という点はしっかりと考えて、誰よりも先に情報としてお届けするというのが、皆さんが信頼されるための大切なポイントです。
「難しそうだから、私はノータッチ」なんて思ってたら取り残されますよ!