所得税⑤「103万円の壁」ってどうなったんだっけ?
続けています「所得控除」、今日は「配偶者控除」と「配偶者特別控除」についてです。
“特別”の一言がつくかつかないか…、しょっちゅう変わる…、等々、分かっているようで間違えやすい所得控除です。
そして、この“切れ目”をとらえて「〇〇万円の壁」と称し、サラリーマンの奥様方が勤めに出ることの損得が論じられます。
この「壁」は「所得税」だけでなく「社会保険」も関係したことですので、今日は最新の「配偶者控除」「配偶者特別控除」、そして「壁」について考えてみましょう。
まず「配偶者控除」「配偶者特別控除」ですが、単に配偶者の所得が問われるだけではありません。
そもそも「配偶者控除」「配偶者特別控除」を受けられる配偶者とは…、
・民法上の配偶者であること(=内縁関係は対象にならない)
・納税者と生計を一にしていること
・納税者が青色申告・白色申告の自営業者の場合はダメ(専従者控除へ)
…です。
そして、平成30年からは、納税者本人の所得・配偶者の所得を細分化して控除額が計算されるようになり、これを文章で表そうとすると「もうやだ~」ってなること間違いありません。
なので、大切なポイントを箇条書きにしたうえで、早見表でイメージしてもらおうと思います。
ポイントは…、
①「配偶者控除」のためには、配偶者がパート等給与所得の場合、「48万円+給与所得控除55万円=103万円」以下であること。
②前記①で103万円を超えたら、「配偶者控除」はなくなって「配偶者特別控除」にバトンタッチする。
③納税者本人の給与収入が1,120万円以上になると「配偶者控除」「配偶者特別控除」は減額される。
③納税者本人の給与収入が1,220万円以上の場合、「配偶者控除」も「配偶者特別控除」も受けることはできない。
…です。
そして早見表にすると…、
満額の38万円控除を受けられるのはどの枠なのか、逆にゼロとなってしまうのはどの枠なのか、ここは注意して見ておきましょう。
次に、「壁」についてです。
「壁を越えたら損って聞いたから、それ以上にならないように調整してる…」という方、沢山いらっしゃると思います。
そんな皆さん、“何が損なのか…”、“超えたらどうなるのか…”をちゃんと理解してますか? 「お隣の奥さんが言ってたから」というだけで、なんとなく“怖い壁”とイメージしてるだけではありませんか?
この「壁」、確かに超えると「配偶者控除・配偶者特別控除が受けられなくなって、ご主人の所得税が増える」とか、「社会保険の扶養家族から外れてしまい、自分で社会保険料を払わなければならなくなってしまう」という影響があります。
税の面、社会保険の面、切れ目となる額が異なりますから、「壁」も何段階かあるというように考えてください。
これを一表にまとめると…、
…こうなります。
奥様がパートに行く先がABどちらになるかによっても異なりますので、表のように4段構えの壁をイメージして、自分はどこにあたるのかを考えてくださいね。
以前、松江市からの依頼で「壁を心配して働きに出ることを躊躇している専業主婦」の皆さんにセミナーをさせていただきましたが、私の結論はこうです。
【壁を超えることで、自分で社会保険料を納めることになるとしても、その分、自身の社会保険を持てることは意義あること!】…と申し上げたい。
さらに、税・社会保険という面だけでなく、溌溂と仕事に臨むお母さんの姿というのは、お母さん自身のためにも、その姿を見て学ぶ子供たちのためにも、必ず良い効果を生むと思います。
外に出ることのできない事情が他にある場合はしょうがありませんが、「出ることのできる環境」があり「出たいという意欲」があるのであれば、この「壁」のために悩む必要はないと思います。
所得税をテーマとした流れからは若干横道に外れちゃいましたね。
次回は道を戻して、「税額控除」について話を進めていきましょう。