<相続⑳>直近の法改正を整理します!
「相続」シリーズも20回、今日は、ここ最近の相続関連の法改正についてです。
“いつから・なにが”変わるのか、よく整理して理解していってください。
法改正・税制改正というのは、皆さんがお客様に“旬な情報提供”ができる絶好のチャンスです。
それまで全くそんな話してなかったのに、お届けしたニュースがきっかけで深くお話しができるようになった…、こんなケースはよくあります。
「この人には興味ないだろうな~」って決めつけないで、一人でも多くの人にお届するんだという意識を持ってくださいね。
今回の法改正から、ここでは以下の6点をご紹介します。
①「配偶者居住権」の新設 =2020/4/1~
②「自筆証書遺言」の改正 =2019/1/13~
③「自筆証書遺言」の保管 =2020/7/10~
④「遺留分」の見直し =2019/7/1~
⑤「特別の寄与」新設 =2019/7/1~
⑥「預貯金の払戻し」制度 =2019/7/1~
…です。
内容はこれからお話ししていきますが、ご覧のように取り扱いの開始日がそれぞれに異なります。
ただし、最後となる③も既にスタートしましたから、どれをお話ししても「まだこれから」というものはありません、全てスタートしていますので安心してください。
①「配偶者居住権」の新設
これは、少子高齢化が進む日本において、“夫婦とも高齢、子供は独立して親の家は継がない”という家庭が多くなり、残された配偶者が一人で暮らしていくケースの場合に、その後の生活を守っていくことを趣旨としています。
モデルとして、「夫Aが亡くなり、相続人は妻Bと息子Cの2人のみ」というケースでお話しします。
法定相続では、BCともに1/2づつという相続をするわけですが、この割合に変更があるわけではありません。
遺産が「自宅(土地+建物)2,000万円と預貯金3,000万円」であり、引き続きこの家で生活するBが土地建物を相続するとなったら、以前は「預貯金500万円をB、2,500万円をC」が相続していました。
2人ともに2,500万円づつの相続ではありますが、内容的には「Bにとっては以後の生活のための資金が不足する」という心配が生じますね。
そこで登場したのが「配偶者居住権」です。
この例では、「預貯金は1/2である1,500万円づつ」相続し、不動産については「Bは配偶者居住権1,000万円、Cは負担付所有権1,000万円」を相続します。
配偶者居住権というのは「引き続き住み続ける権利」、負担付所有権とは「その家には住まないけど所有する権利」ということです。
これで、2,500万円づつの相続には変わりなく、妻Bの老後生活のために現金が1,500万円あるということになりました。
②「自筆証書遺言」の改正
以前にもお話ししたとおり、「自筆証書遺言」というのは「全て自筆」であってこそでした。
今回はルールの一部を緩和して、今まで以上に使いやすくすることを趣旨としています。
その緩和は「財産目録はパソコンで作成した物でもOK」ということです。
財産項目が多い人にとっては、一つ一つ手書きする負担が軽減されるわけですね。
ただし、遺言の本体・日付・署名・財産目録への署名は、今まで通り自筆でなければなりません。
③「自筆証書遺言」の保管
これまで「自筆証書遺言」は「自ら作成し・自ら保管する」というものでしたが、これでは“遺言があることを誰も知らない”とか、“紛失”、“悪意ある相続人による破棄”、…などの心配がありました。
そこで今回加わったのが「法務局での保管」です。
これによって、費用はかかりますが、遺言があるということが明確になり、その保管も安心です。また、自宅保管の場合に必要となる「検認」も、法務局保管については不要です。
④「遺留分」の見直し
これまで、「遺留分」を求める場合には「遺留分減殺請求」として、お金・不動産等、すべての財産に対して、権利を請求するものでした。
しかしこれでは不動産を部分所有する複雑なものになってしまったり、不動産・自社株のように換金できない財産が多い場合には不都合な問題が生じました。
そこで、名称も改めて「遺留分侵害額請求」として、あくまでもお金を請求できるということになりました。
割合等はこれまでと変わるものではありませんから、請求された側にとっては何とかしてお金を作らなければならないわけですが、不動産・自社株等を分割しなくてもよくなり、特に事業後継者にとっては、その後の経営に影響する心配は少なくなりました。
⑤「特別の寄与」新設
例えば、高齢の母Dには長男Eと長女Fがいるとします。
生活はDとE夫妻が同居、Fは他家に嫁いで別暮らし。長年E夫婦がDの介護をし、Eが亡くなった後もEの妻がDと同居して世話をしてきました。
この間、FがDの世話をすることはなかったのですが、これでDが亡くなったらどうなるでしょう?
E夫婦に子供はなく、Eの妻がDとの養子縁組もしていないとすると、財産(この場合はD・Eの妻が住んでいる家)は全てFが相続することになりますね。
これでは、長く世話してきたEの妻が可哀そうだということで、Eの妻からFに対して「特別の寄与分」を金銭で請求することができるようになりました。
⑥「預貯金の払戻し」制度
預貯金の持ち主が亡くなると、基本的には口座は凍結され、分割協議が完了するまでは相続人は単独では払戻しを受けることはできませんでした。
でも、これでは病院への支払いや葬儀葬祭を行う者は、大きな金銭的負担を負うことになってしまいますね。
そこで、「葬儀を行う相続人は、単独で被相続人の預貯金の一部を払戻しできる」ことになりました。「1金融機関あたり150万円、または払い戻しを受けようとする相続人の相続分の1/3の額、いずれか少ないほう」までという金額的上限はありますが、確実に便利にはなりましたね。
…以上6点をお話ししましたが、これが全てではありません。また、一つ一つの解説も充分なものではありません。
あくまでもポイント抜粋してお話ししたレベルですので、お客様と詳細な話になった場合には、もっともっと詳しく勉強していってくださいね。