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【ニュース】年金生活者は「年に1.5日飲まず食わず」で暮らせ!?

ちょっとショッキングな言い方になりましたが、これは実際にお国が求めたことなんです!

「何それ!」って思われたのではないでしょうか? この理由、解説していきますね。

 

1月21日、下図のように令和4年度の年金額が決定され、厚生労働省から案内されました。

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年金額というのは、毎年物価変動の状況などを考慮して決定されます。

「物価スライド制」なんて言葉はご存知の方も多いのではないでしょうか。これは…、

・物価が上がると、年金額がそのままだったら実質は目減りしてしまう。

・物価が下がると、年金額がそのままだったら実質は増額したことになる。

…というように、“年金の実質価値”は物価の変動とともに変わってしまいますね。そこを調整するために、「物価の上昇=年金の増額」「物価の下降=年金の減額」によって、年金の“価値”を変えないようにしていたわけです。

ここまでなら解りやすいのですが、今は更に他の要素まで加味してマクロ経済スライド制」が導入されています。

さあさあ、これでチンプンカンプンになってしまいますね。(それが国の狙いなのかもしれませんが…)

本記事タイトルの種明かしをするためにも、この「マクロ経済スライド制」について少しだけ解説しておきます。

 

まず、“加わった他の要素”というのが、

名目賃金変動率、②公的年金被保険者数、③平均余命の延び、…この3点です。

皆の賃金が多くなれば、厚生年金保険料の総額が大きくなりますから、それだけ年金額を大きくしてあげてもいいですよね。…逆に、賃金が下がれば年金額を下げなきゃいけなくなるわけです。

被保険者数が増えれば、それだけ公的年金保険料の総額が増えるでしょうから、それだけ年金額を大きくしてもいいですね。…逆に、被保険者数が減ると年金額を下げなきゃいけなくなります。

平均余命が延びると、それだけ年金をもらう期間が長くなれますから、年金額を下げないと制度が破綻してしまう危険性がありますね。…逆に、余命が下がると年金額を上げても大丈夫ということになります。

…いかがですか? 一つ一つを見ていただくと「そりゃそうだ」とご理解いただけると思うのですが、これが4項目(物価・賃金・被保険者数・平均余命)重なり合う仕組みとなったので、なんとも複雑・難解なものとなりました。

 

では、結果として今年はどうだったのか…、

①物価変動=▲0.2%、②賃金変動=▲0.4%、③④マクロスライド=▲0.3%…となり、結果的には『0.4%の減額、マクロスライドは持ち越し』となったわけです。

基礎年金(満額)の実額に直すと、780,900円が777,792円となります。

これだけ見たら「たった0.4%、ほとんど同じじゃん」「年間で3,000円ほどのことでしょ」と思われるかもしれませんが、ここでちょっと違う角度から見てほしいんです。

「0.4%の減額」でしたね。では1年間(365日)の0.4%というのはどれだけの日数になるかということです。電卓で「365日×0.4%」と計算すると、答えは「約1.5日」となります。これが今日の表題で申し上げたかったことなんです。

去年と同じように年金で生活していくためには、『年に1.5日は飲まず食わずで電気も一切使わない…』という日を作らないと足りなくなってしまうわけですね。

ましてや、今はウクライナ情勢の影響でガソリン代や小麦などの値上げが続いているわけですから、このままでは1.5日では足りないかもしれませんね。

0.4%という数値、決して軽視できない減額だと感じていただきたいと思います。

 

そして更にもう1点マクロスライドの持ち越し」という点です。うっかりすると、「そうか、国は③④でのマイナス要素は目をつぶってくれたんだ…」と解釈してしまいそうですが、そうではありません。

「持ち越し」というのは、「次年度以降に年金を上げる状況になったとしても、そこで発動することで年金額を上げない…」というカードを国は手にしているわけです。

 

なんとかして年金制度を維持していくための策であることはわかるのですが、結果的に老後を支える公的年金は“目減りするばかり…”という現実を目にすると、なんとも悲しくなってきますよね。

 

今日は悲観的なお話しで終始してしまいましたが、唯一今年の改正で明るいニュースがありました。

それは「在職老齢年金」の制度改正です。

ここは次回、明るいニュースとしてお話ししますね。