FPの小ネタ

保険営業に役立つ小ネタ集

【ニュース】在職老齢年金のルール緩和されます!

本年(2022年)4月から、「在職老齢年金」制度のルールが改訂されますのでご紹介しますね。

 

そもそも、この在職老齢年金という制度、私は“とんでもない悪法”と思っていました。

この制度、「頑張って年金かけてきましたね。でも、あなたはお給料があるんだから、この年金がなくても生活にはこまらないでしょ、だから僕に頂戴ね…」って、お国に召し上げられていた制度です。

導入当初は、お給料があるというだけで年金の2割がカットされてしまい、その後「年金と給与の合計額からカット額を計算する」仕組みになりましたが、逆に70歳を超えても、エンドレスでカットされる仕組みになってしまいました。

例えば、中小企業経営者を想像してください。

社長である限り、それなりに高額な報酬をもらい、定年のない生涯経営者であるということは、『一生厚生年金は1円ももらえない…』なんていうことにもなりかねないものでした。

でも、あまりテレビのニュース等にも取り上げられないですよね。

そう、多くの国民は定年を迎える立場であり、仮に定年後も延長等で勤めたとしても社長と比べたら給与はそれほど大きなものではないので、この在職老齢年金の仕組みにあてはめても、それほどの大きな問題にはならなかったので、マスコミも積極的に取り上げる話題ではなかったわけです。

なので、この仕組みをご存知の方は少なく、逆に誤解も多く生まれるものでした。

「働いている間は年金カットになっても、その分は退職後に上乗せしてもらえるんでしょ…」⇒これが誤解です!

年金の「繰下げ」をすると、受給開始は遅くなっても年金額は増額されますね、これと同じと思い込んでの誤解です。

正しくは、「在職老齢年金のルールでカットされた部分は放棄したのと同じで、二度ともらえるものではない!」という点は間違えないでください。

 

そうすると、せっかく永年かけてきた年金をしっかりもらうためにはどうするか…、高齢になってからの給与をできるだけ少額に抑えて、年金がカットされないようにしたり、“給与所得”ではカットされてしまうから、“事業所得”になるようにやりくりしてみたり…、いずれにしても高齢者の勤労意欲には水をかけるものでした。

 

その在職老齢年金が、今年の4月からルール緩和となるんです。これは朗報です!

 

簡単に解説しますと…

<現行ルール>

65歳未満は、給与と年金の合計月額が28万円を超えたら、超えた部分の半分年金からカットする。

65歳以上は、給与と年金の合計月額が47万円を超えたら、超えた部分の半分年金からカットする。

<新ルール>

・年齢に関係なく、給与と年金の合計月額が47万円を超えたら、超えた部分の半分年金からカットする。

…となるわけです。

 

改定対象となるのは65歳未満。そうなんです、経営者じゃなくても65歳までは継続雇用で頑張っている従業員層に大きく影響する改正です。

事例でご紹介したほうが解りやすいですよね。

例えば、「年金月額が15万円」「給与月額が32万円」という方をイメージしてください。(年金額・給与額ともにありそうな額でしょ)

現行のルールでは、65歳までは…

①年金・給与の合計月額   … 15万円+32万円=47万円

②ルールにあてはめた超過額 … 47万円-28万円=19万円

③年金からカットされる額  … 19万円×1/2=9.5万円

④カット後の年金額     … 32万円-9.5万円=22.5万円

…でした。

これが、“給与・年金合計で47万円を超えたら…”というルールになるわけですから、上の例では“合計47万円”ということでカットされないでOKということになるんです。

60歳から65歳の間で年金ってもらえるんだっけ?…と思われた方もあると思います。

年金制度は昭和61年に大きく改正され、「60歳開始を65歳開始に」なるように、段階的に開始年齢を引き下げていっている最中なんです。

さらに、繰上げで60歳から受けている方もあるでしょう。

こんな皆さんにとって、仮に上の計算で「9.5万円×12カ月×5年間」としたらどうなります? 答えは570万円ですよ!

これだけ大きな額が、老後の生活資金として使えるわけですから、これは嬉しい改定ですね。

 

ただし、途中申し上げたように、中小企業経営者の皆さんにとっての解決にはなかなかなりません。

仮に、「年金月額が20万円」「給与月額が100万円」として計算してみましょう。

①年金・給与の合計月額   … 20万円+100万円=120万円

②ルールにあてはめた超過額 … 120万円-47万円=73万円

③年金からカットされる額  … 73万円×1/2=36.5万円

カット後の年金額     … 20万円-36.5万円=0万円

…ということで、「生涯100万円の役員報酬がある社長は、一円も厚生年金はもらえない」ということに変わりありません。

この話をすると「まあ、基礎年金だけでもくれるのなら…」と諦める社長もいらっしゃいますが、永年にわたり国民年金保険料以上に大きな厚生年金保険料を納めてきた価値はどこにいってしまうんでしょうね?

 

ということで、経営者層への課題は残ったものの、「60代前半で働き続ける従業員層」にとっては、よほど大きな給与額でない限り、ほぼ課題は解決されたと言ってもいいでしょうね。

 

参考まで、厚生労働省からの案内がこちらです。

f:id:takamisan:20220307183748p:plain