法人税⑤「損金計上・資産計上」どっちがいいの?
今日は、特に保険営業(生損保)を行う上で飛び交う台詞についてお話ししますね。
法人契約を提案する際、必ず会話に登場するのが、
・「この保険料は損金になるのか、資産計上なのか…」
・「保険金・給付金をもらう際にはどう処理するのか…」でしょう。
特に前半の保険料処理のほうが目の前のことですので話題のウェイトは重いですよね。
そこで皆さんは“どう考えて”、“どうお話し”していますか?
損金なのか、資産なのか…、ここを「損得」で考えてしまうとおかしな説明になってしまい、本当にお客様のためにならない方向に向かってしまいます。
まずは、「損金計上・資産計上の意義」をきちんと理解して、そのうえで「保険料・保険金・給付金の経理処理」を正しく説明できるようであってください。
★損金計上・資産計上の意義
損金とは…、という点はこれまでにお話ししましたね。決算年度1年間の中で得た「売上」から、「原価・費用・損失」を差し引いて「利益」を算出し、その利益に対して課税されるという仕組みでした。
法人が支払う保険料についても、会社の財布から出ていくお金ですから「費用」として損金に計上できるように思うのですが、なんでもかんでもそうはいきません。
考え方としては、「戻ってくるお金ですか?・戻ってこないお金ですか?」という区別で、戻ってくるなら資産計上に、戻ってこないなら損金計上に、…という考え方が基本です。
言い方を変えますね。
皆さんのズボンにポケットが2つあって、「右のポケットの1万円を、左のポケットに移す」のが資産計上であり、「ポケットの1万円で紙飛行機を作って飛ばす」のが損金計上…です。
資産計上になる場合は、「現預金」というポケットから1万円が出ていきますが、同時に「積立金」というポケットに1万円が増えていきますから、これでプラスマイナスゼロだということです。
このプラマイゼロという点を間違えないでいただきたいんです。
何度も言うようですが、法人への課税は利益に対してです。
つまり「増えた」部分への課税ですから、プラマイゼロであれば「税金は増えるわけではない」ということです。
よくお客様から「資産計上ということは税金かかるじゃないか!」と言われてシュンとなってしまう方がいますが、そんな方は「資産計上=税金増える」と受け止めていませんか?
それは違いますよ。資産計上になるということは、「税金は増えも減りもしない」というのが正解なんですよ。
そもそもの本業で得た利益に対して課税される税金が、増えるのでもなく・減るのでもなく必要となるわけですから、まずここは間違えないでください。
ただ、現預金は減ってしまったわけですから、そこから税金を払おうとすると“お金が足りない”ということにはなり得ます。
本来、社長さん達が問題視するべきはここ「使える現金が減る」という点であり「税金が増える」という点ではないのですが、どうも社長・営業マン双方が勘違いして「税金が増える」というような会話になってしまうようです。
もし、そんなやりとりになってしまったら、落ち着いて「税金が増えるわけではない」という点はブレないでくださいね。
そして損金計上になるということは「戻ってこないお金」として“落とす”わけですから、その分利益が減少します。100万円の損金だとすると利益が100万円減少し、税率30%と仮定すると「税金が30万円少なくなる」ということになりますね。
ただ、ここもよく考えてくださいね。
以前にも話しましたが「税金少なくするために、海に100万円投げ捨てた」のでは意味なかったですね。税金が30万円少なくなったとしても、現金は100万円無くなっているわけですからね。
だから、この100万円は“無駄な”100万円にするのではなく、会社の“役に立つ”100万円になってこそ意義がある損金だということです。
保険提案として損金計上のものをお勧めする場合は、「今、これだけの税金が少なくすみます…」という点をアピールしたのではダメです。
「まずはこれだけの税効果があり、将来はこうやって会社のためになります…」というところまで、きちんと胸を張ってお話ししてください。
保険料が損金計上なのか資産計上なのか…、そこで損得を考えるものではないということです!