法人税⑧「損益計算書」を理解する!
前回の「貸借対照表」に続き、今日は「損益計算書」の読み取り方についてお話ししていきましょう。
まず、おさらいです。
金太郎飴を思い描いていただき、“切り口の顔”、そして“飴の太さの推移”…、こんなお話しをしましたね。
「損益計算書」は、この後者“飴の太さの推移”を表します。
なので、“顔”は瞬間ですが、“太さの推移”は、いつからいつまでという「期間」が必要になってきます。
これが「決算年度」です。
ちなみに、「決算年度」とか「決算月」というのはいつでもかまいません。
会社創設の月にあわせる必要もなく、4月から3月に揃える必要もありません。
さらに言うならば、途中で決算月を変えることも可能だということも覚えておいてください。
業種によって“都合のよい時期”というのもあるでしょうから、そこに合わせていくということもできるんですよ。
さて、話を戻しますね。
「損益計算書」は決算年度の1年間で、“どれだけの売上を上げて”、“そのためにどれだけの経費がかかり”、“結果としてどれだけの利益を生んだか”、…という順に見ていきます。
「貸借対照表」は左右で見ましたが、「損益計算書」は『上から下へ』の順に見ていきます。
ここで必要なのは足し算と引き算です。難しい数式や関数は登場しませんので安心してください。
この「損益計算書」、指を置いて重視していただきたいのが「5点」あります。
①売上・②売上総利益・③営業利益・④経常利益・⑤当期利益…の5点です。
どれだけ複雑な損益計算書でも、この5点をチェックして(…例えばクルッと〇印をつけて)いけば、社長さん達とお話しする時にも、“こいつはちゃんとわかってるぞ”と思っていただける話ができることでしょう。
「損益計算書」のモデルを見ていただきますと…、
…こんな感じです。
実際には足し算・引き算となる“行”がたくさん表示されていますから、パッと目では複雑に見えますが、何度も言うように①~⑤を抜き出して見ていくことができれば、決して難しい物ではありません。
まず、「売上高-原価」で“粗利”がわかります。
そして、「粗利-販売費・一般管理費」で“本業の利益”がわかります。
さらに、「本業以外の収支」「今期特別な収支」を見ていくことで、その会社の財務体力の強さ・弱さだったり、決算対策のための操作の有無だったり、…いろんなことが読み取れます。
そして、例の右に書きました「率」に注目してください。
②~⑤それぞれを①で割り算した率なのですが、「売上高総利益率」(俗にいう「粗利」)は会社の規模が小さいほど高く、40%~60%というところ。
「営業利益率」は本業での利益率が見えますが、大企業では30%くらい、中小になると10%くらいかな。
そして「経常利益率」「当期利益率」になると、大企業で10%程度、中小では数%というところでしょう。
この「利益率」は、決算書には記載されていない場合もありますので、紙を準備して書き出していくというのも良いでしょうね。
これは、経営状況を読み取っていくというだけでなく、『褒めポイント』を探す上でも役立ちます。「社長、この〇〇利益率は大企業並みですよ!素晴らしい経営をされてますね!」なんてね。
そしてマニアックな点をひとつ紹介しておきます。
★「販売費・一般管理費」÷「売上高総利益率」=損益分岐売上高…となります。
これは、原価は売上高のポリュームとともに大小変化しますが、販売費・一般管理費という“固定費”は売上高が変わっても、大きな変化は生じません。
つまり、固定費相当額以上の粗利がなければ利益は得られないわけですから、経営者としては「最低これくらいの売上は確保しなきゃ!」という目安になります。
これを応用すると、「最低これくらいの利益を出したい」という目標線があるならば、固定費を基にして、「そのための売上目標額」を設定していくこともできますね。
…ここは少々難しくなりますし、相当突っ込んで社長さんとお話しできる場合ですから、応用編程度に読んでいただければ結構です。