<働・健⑮>「時間外労働」は水面下に見えにくく?
「健康経営」「働き方改革」をお話ししていくうえで、先日こんな数値が公表されました。数値自体を覚える必要はありませんが、“前年からの動き”から見えてくる傾向は理解しておきましょう。
ご紹介する数値は、厚生労働省が公表した「長時間労働が疑われる事業場に対する令和元年度の監督指導結果」です。
「時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場」を対象に行われた調査結果です。
対象となった事業場は32,981事業場にのぼり、そのうち25,770事業場で労働基準関係法令違反がありました。率にすると78.1%であり、これは前年の69.6%と比べて増加しています。
公表された数値を前年と対比して抜粋したのが下表です。
この数値・動きを見ると…、
★「違法な時間外労働」は1.3倍に増加している
★ところが、「月80時間以上」という長時間の時間外労働は減少している
★すなわち、「80時間未満」での違反が2.5倍に増加している
★これは、時間外労働が正しく把握されていないためか、「賃金不払残業の違反」や、「労働時間把握方法の指導」が増加している
…というような傾向が読み取れます。
私見ではありますが、現実には時間外労働が増加しているのに、“記録させない”ケースや、“記録しにくい空気”が増えて、結果として賃金不払残業等で、水面下で見えにくくなっているのではないでしょうか。
言うまでもなく、これは良い傾向ではありません。
これがどんどんと水面下で見えなくなってしまい、ある日突然、心を病んでの自殺等が生じてしまった…、なんて悲劇になりかねないですよね。
「健康経営・働き方改革」で目指す方向は…、
・経営者の強く正しいリーダーシップのもと、
・従業員も積極的に参画し、
・業務効率を根本的に見直し、
・心身ともに健康で、
・高い生産性の会社にしていく
…ことです。
「働き方改革関連法」に対処することだけを考えていくと、“隠す”・“言いにくい空気にする”という方向に向かう危険性もありますね。
日々、経営者層とお話しする皆さんは、この違いをきちんと理解して、強い会社・良い会社に向かうためのアドバイザーになるという意思をしっかりと持っていっていただきたいと思います。