【月次支援金②】申請手続きの実際
前回、「月次支援金」についてご紹介しました。
私も“請負講師業”を生業としているわけですが、コロナ禍によって集客セミナーや集合研修がなくなってしまい、すなわち講師依頼もなくなってしまいました。
2019年初から活動を開始し、1年かけてようやく歯車が回り始めたかと思った2020年、全くの休業状態となり、1年もあれば解消するかと思ったのに未だ拡大が続いていますね。
Webでの研修講師も数件ご依頼はいただいておりますが、月によってはゼロの月も多く、そもそも非対面での研修ではご参加の皆さんの反応が感じられず、研修効果にも影響はあると思います。
一日も早く、元の姿で広くお話しできればと願っています。
さて、本題に戻しましょう。
上記の状況を踏まえて、私も「6月」の申請作業を済ませました。
まだまだ「申請内容確認中」というステータスですから、はたして承認されるかどうかはわかりません。
まあ“不正受給”を企てている者ではないことだけは声を大にして申し上げたいと思っています。
今日はこの「手続き作業の実際」をご紹介したいと思います。
マニュアルに書かれていること・いないこと、取り混ぜてのご紹介になりますが、現実の事例として、何か参考になればと思います。
この申請作業、大きく2つのステップに分かれます。
【第1ステップ】=事前確認作業
【第2ステップ】=Web申請作業
…です。
では、このステップに沿って、何を準備して、どこに注意が必要か…、こんな視点でお話ししますね。
【第1ステップ】=事前確認作業
①商工会議所・商工会等の商工団体、税理士・行政書士等の士業、こんな方との「面談」が必要です。“どこにお願いするか…”を自分で決めなければなりません。
制度案内のホームページから確認機関の一覧が見れますから、懇意なところとか、近さとか…、まずはここを考えます。
私は近くの商工会(会員にはなっていませんが)にお願いすることにしました。
②決めた「確認機関」に電話して、面談の日程を決めます。
③面談に伺います。私の場合所要時間は約1時間でした。
準備する書類等が完璧だったら、もう少し短時間でできたのかなとも思います。
★準備する物は…
・運転免許証=本人確認のため
・預金通帳=事業の入出金が記載されている物
・売上台帳(2019年・2020年・2021年)=月別に売上が把握できる物。
私は自身で作成しているエクセル表を添えました。
・申告書類(2019年・2020年)=申告書・収支内訳書全ページ。
私はE-taxで白色申告をしていますので、PCに保存している「控え」を添えました。
・納税証明書(2019年・2020年)=E-Taxマイページに入っているメッセージをプリントしてもよいのですが、何度チャレンジしてもメッセージを開くことができません。仕方なく税務署まで行って「納税証明書」を発行してもらったのですが、そこで「なぜできないの?」と質問したところ、「マイナンバーカードをカードリーダーで読み込んで申告している方じゃないと見れません」と素っ気ない回答でした。
④確認機関での作業が終わると、「確認済」の旨の番号を確認機関のほうで入力されます。これがないと、自身で行う「本申請」ができません。
【第2ステップ】=Web申請作業
⑤自身のパソコンで「Web申請」作業をおこないます。
実際には、確認機関での面談を受ける前に「仮登録」まで済ませて「マイページ」を作っておきましょう。そうすることで、確認機関からの上記④の作業がスムーズに進みます。
⑥マイページから「本申請」を行います。
手順は画面上で指示されるとおりに進めていけばよいのですが、上記③で書いた書類は全て再び必要になります。…整理してまとめておくのがよいでしょう。
この添付書類、全て“携帯で写真を撮ってPCに保存し、それを指示に従って添付する”という作業が必要です。
これにそこそこ時間がかかり、私は「写真撮影⇒メールで送信⇒受信物をデスクトップに保存」をして使いました。
この作業に時間がかかり、私は「2時間弱」かかりました。
…途中で中断もしましたが、“また最初から”ではなく、続きから再開できますので安心してください。
本申請作業に入る前に、事前に全て準備して専用のホルダーでも作っておいたら間違えずに進められるでしょう。
⑦事務局から「申請を受け付けました」旨のメールが届きます。
以降、進捗状況はマイページからチェックしていきます。
私は7月1日に本申請まで完了しましたが、前回書きましたように今は4月分・5月分・6月分ともに申請期間内です。
当然、4月分から作業は進められているでしょうから、私の6月分の可否決定がいつになるかはわかりません。
日々チェックはしていきますので、動きがあったらまたご紹介しますね。
今日は「国の月次支援金」手続きについて書きましたが、「県の月次支援金」の手続きはこれまた別の話です。
(…リンクしてくれたら二度手間にならなくて済むのにね。)
これはまた次回お話ししましょう。
【トピックス】「月次支援金」って知ってますか?
久しぶりの投稿、お許しください。
皆さんは経済産業省の「月次支援金」という制度をご存知でしょうか?
位置づけで言うと、昨年の「持続化給付金」を、今年1~3月に継続・発展させたのが「一時支援金」、さらに4~6月に継続したのが「月次支援金」という感じです。
つまり、“新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言やまん延防止措置になり、そのために売り上げが大幅に減少した”事業者を支援してあげようという趣旨です。
詳細は下記のリンクで確認してください。
恥ずかしながら、私はこの「一時支援金」という制度を誤解してました。
「飲食業者および飲食業者への納入等関連業者」に限られたものだと思い込んでしまいったのですが、実はよく読むと「外出自粛の影響で…」というのもあり、教育関連や士業についても対象となる物でした。
加えて、緊急事態宣言・まん延防止措置の対象地域以外の事業者であっても、取引先が対象地域のために影響受けているという場合もOKです。
ただし、以前の「持続化給付金」では幽霊申請と言いますか、事業していない人が不正に給付を受けていたというニュースが沢山ありましたね。
今回はそんなことがないように、Webでの申請の前段階で、商工会議所・商工会・税理士等の「登録確認機関」との面談が必要になりました。
ここが給付の可否を判断するわけではありませんが、“確かに事業を営んでいる者”だという確認作業が加わっています。
「月次支援金」という名前のとおり、“月単位”で申請する必要があり、
・4月・5月分は「6月16日~8月15日」
・6月分は「7月1日~8月31日」の間に申請しなければなりません。
…まさに今、申請期間の真っ最中です。
私自身、4月・5月は対象にはなりませんでしたが、6月は講師依頼がゼロ件となってしまい、恥ずかしながら売り上げがない状況でしたので、早速この6月分を申請しました。
・商工会での事前面談は約1時間
・Webでの申請手続きには約2時間
…かかり、現在は「確認中」のステータスです。
そしてもう一点、これは事前確認の商工会で教えてもらったのですが、「広島県では、国の月次支援金に“加えて”、県としての月次支援金制度がある」ということです。
広島県に限らず、他の県・市等の地方自治体でも実施されているところがあるようです。“上乗せ”の位置づけですから、これもとてもありがたい制度だと思います。
肝心なのは、「どれだけの皆さんがこの制度を知っているか…」というところです。
テレビのニュース番組やワイドショーで紹介されているところは見たことありませんから、商工会議所・商工会や、顧問税理士の先生から教えてもらえた方以外、ご存知ない方は沢山いらっしゃるのではないでしょうか。
コロナ禍もすでに2年目、厳しい環境の中で事業継続を頑張っている中小企業・個人事業主のための支援制度です。
知らないまま、誤解したままでスルーさせてしまったらもったいないですよ!
ぜひ、皆さんの口から「こんな制度ご存知ですか?」「制度活用して頑張ってくださいね!」なんて声がけをお願いします。
「教えてくれてありがとう」なんて言ってもらえたら、皆さんの信頼度もアップするのではないでしょうか。
★緊急事態宣言・まん延防止措置対象地域でなくても…
★業種問わず…
支援対象になる可能性はありますよ!!
【事業承継⑧】「M&A」ってどうなの?
「事業承継」テーマも第8回、今日は「M&A」についてお話しします。
「M&A」と聞いて、なんとなく“危険”なイメージを持たれる方は多いのではないでしょうか。「乗っ取り・買収・切り売り」…なんてね。
でも、正しく理解して、正しく使っていくことができれば、経営者にも・従業員にも・取引先にも・顧客にもメリットのある策であり、実際に毎年の実績(件数)においても増加しているんですよ。
図①…全国のM&A件数の推移
図②…中小企業におけるM&A件数推移
上の図は、ともに中小企業庁がインターネット上で公開しているグラフです。
①は大企業も含めた全体像、②は中小企業での推移ですが、M&Aの件数を詳細に集計することは難しく、特に中小企業については取り扱い件数の多い事業者3社の実績でまとめた物です。
M&A・事業承継なら【日本M&Aセンター】 (nihon-ma.co.jp)
M&A仲介とM&A市場SMART運営のストライク (strike.co.jp)
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 (ma-cp.com)
では、改めて「M&A」とは何なのか、そしてその注意点についてまとめてみますね。
★「M&A」とは…
①「M&A」という言葉は、合併(Merger)と買収(Acquistion)の頭文字をとった言葉です。
②親族や社内に後継者がいない場合、「合併」「株式の売却」「株式の交換」等によって、会社が“生きている”ままで、新たな経営者に譲ることです。
③会社と会社の「縁談・お見合い・結婚」のように考えてください。どんな相手で、仲人は誰で…というようなことが「M&A」でも大事なことになってきます。
★「M&A」の注意点…
①良い相手との縁談に繋げるためには、まずは自社を「磨き上げる」ことが大切です。
そのポイントとしては…、
・業績の改善
・無駄な経費支出の削減
・貸借対照表をきれいに=不要な資産の処分、負債比率の改善
・自社の「強味」を明確に
・株主の整理 …などが考えられます。
②縁談が成立するまでは、「秘密保持」が大切です。役員・従業員・取引先等の関係者にも漏らしてはダメです。
③仲人となる事業者の選出には注意が必要です。上記に3社を紹介しましたが、それ以外にも多くの事業者があり、得意な業種・得意な地域・仲介費用など、それぞれに異なります。事前に調べていくこと、商工会議所等の信頼できるアドバイザーの意見を聞くこと、…慎重に進めていくことが肝心です。
ここで、以前にもこのブログでご紹介したことがありますが、事例として再度お話ししておきます。
私が大阪にいたころ、兵庫県内の税理士さん(女性)と仕事でご一緒することがありました。
まだまだ税理士としてスタートしたばかりで、ご自宅を事務所にして顧客開拓を進めているところでしたが、お話しを聞いてみると、この先生ご自身が「M&A」の経験者だったのです。
ご実家は古くから続くお醤油屋さんであり、それほどの規模ではないものの、「歴史」とともに「経験・職人・顧客網」という磐石な強味がありました。
ところが後継者がなく、当時の経営者のお孫さんである彼女が、脱サラして一度は引き継がれました。
会社としての経営状態は悪くはなかったのですが、全く経験のない業界に飛び込むことになり、併せて「税理士になりたい」という夢も捨てきれず、たどりついたのが「M&A」でした。
結果的に、数千万円で会社を売ることができ、ブランドも・従業員も・顧客も守ることができたということです。
もし、ここで「M&A」という道を考えず、ただ会社を“閉める”という道を選んでいたらどうだったでしょう。
当時の試算では、負債整理をしたうえで手元に残るのは数百万円、そして従業員さん達は失業し、ブランドも消え、顧客も困ったことでしょう。
こんなに綺麗に“はまる”ケースばかりではないでしょうが、事業承継の選択肢の一つとして考えておくことは必要だと思いますね。
良い相手との縁組を成し遂げるためには、良い相談相手が不可欠です。
検討してみたいというときは、まずは「商工会議所・商工会」「中小企業基盤整備機構…下記リンク」に相談されることをお勧めします。
【トピックス】健康診断、受けてますか?
今日はちょっと横道に。
先日、私自身の「特定健康診査」を受けてきました。
コロナ禍において、病院に手間をかけさせるのも気がひける部分もありますが、年間の期限が迫ってきたのでお願いした次第です。
“社会人になってから…”を振り返ると、これまで何度の健康診断を受けてきたでしょうね。
会社から指示されて、いうなれば仕事の一部のように受けてきましたが、こうして自分で手配をして受診してみると、改めて、“ありがたさを感じる点”、“疑問に思う点”など感じましたのでご紹介しますね。
まず、上記の「特定健康診査」とは何でしょう…。
これは、厚生労働省が定める健康診断で、「日本人の死亡原因の約6割を占める生活習慣病の予防のために、40歳から74歳までの方を対象に、メタボリックシンドロームに着目した健診を行います。」と定義されているものです。
そして、この健康診断で指摘項目があると「生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる方に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポートをします。」という「特定保険指導」も行われるものです。
今、公的医療保険としては、健保(組合・協会)・国保など、複数の制度がありますが、働く本人の場合は前述のように会社で手配されていても、自営業主や家族にとっては、送られてきた郵便物に則って、自身で電話予約をして受診します。
下表は各保険の人数をまとめた物ですが…、
色をつけた、約7千万人の内、多くが自分で手配する必要があるわけです。
ずいぶんな占率ですよね。
では、この皆さんが、どれくらいきちんと受けていると思います?答えは「受診しているのは3人に2人。残る1/3の人は受けていない!」…ということなんです。
受けていない人にアンケートをすると、その理由として…
①心配なときは自分で受けるから…(33%)
②時間がとれないから…(23%)
③めんどうくさいから…(18%)
というような声が上位で返ってきています。
なんとも、もったいないと思いませんか?
この健診、お値段はどれくらいのものかというと、基本項目で「約1万円」かかる健診です。
他にオプション検査を加える場合は別途の費用が必要にはなりますが、少なくとも「約1万円相当の基本項目」は自己負担なく受けられるわけですから、これを“めんどうくさい”と言って受けないのはもったいないですよ。
…こちらが基本項目として受けられる内容です。
そもそも「生活習慣病予防」が目的ですから、糖・たんぱく・肝機能などに着目しているわけですね。
私は、「痛みなどの自覚症状がある病気はそれからでもいいけど、自覚症状なく進んでいってしまう病気こそ、こうした健康診断でチェックしていくことが大切!」だと思っています。
「自覚症状なく進む…」というと、何といっても「糖尿病」と「動脈硬化」でしょう。
「糖尿病」は、「合併症」・「他の病気でも手術等の治療が受けられなくなる」というような怖さがありますし、「動脈硬化」は「脳血管疾患」や「心疾患」に発展する怖さがあります。
もちろん、この基本項目だけで万全ということではありません。
でも、定期的に健診を受けて、それぞれの数値の「推移」を意識していくことは、大きな病気の早期発見につながることは間違いありません。
「めんどうくさい」なんて思わずに、しっかりと受けに行ってくださいね。
【事業承継⑦】会社(自社株)を「売る」場合
事業承継の大きな道すじ、「あげる」のか「売る」のか…、これまでは「あげる」場合の税制や注意点をお話ししてきました。
「あげる」ということは、現社長の手元に「お金」が入ってくるものではありませんから、これは息子さん・娘さん等が後継者になる場合でしょうね。
これが、近い親族に適当な人がおらず、親戚とか従業員が後継者になるという場合はどうでしょう。
さすがに他人さんにとなると「あげる」という選択は厳しいでしょうね。
現社長が永年頑張って大きくしてきた会社、社長にとっての最大の財産ですから、引退後の生活のためにも、それなりの金額で「売る」という道に進みたいでしょう。
仮に、1,000万円の資本金でスタートした会社、今では自社株の評価が10,000万円になっているとします。
そこに、従業員として一生懸命務めて、社内での人望も厚く、後継社長として頑張っていきたいという意欲も持っているBさんがいるとします。
会社・従業員・取引先・顧客、全ての方面からしてもこれがベストな事業承継だとしても、越えなければならない大きな壁として、“買取資金”という問題が生じます。
例のように「評価10,000万円」だとすると、これだけ大きな資金を一般従業員であるBさんが準備するのは簡単ではありません。
現社長(Aさん)のやさしさで“安く”しすぎると、評価額との差額を「贈与」したととられてしまう危険もありますから、やはり評価額相当で売る・買うを行うべきです。
Bさんが個人で資金調達をして「買う」という方法を考えるのであれば、日本政策金融公庫に相談してみてください。事業承継目的として優遇された融資制度もあります。
…下図は中小企業庁のホームページにある冊子です。
こんな物を参考にしながら、まずは日本政策金融公庫・県の商工労働部・商工会議所などに相談してみるのが良いかと思います。
でも、やはり「10,000万円という高額」の借金を背負うというのは大変なことですよね。
そこで、もう一つこんな方法はどうでしょう。
これは、Bさんが新しい会社(資本金は少額で結構です)を作り、Aさんはこの新会社に対して持株を売ります。
新会社はそのために金融機関から融資を受けるわけですが、現在のA社を完全子会社とするわけですからA社の経営が順調であれば大丈夫でしょう。
結果的に、Bさんは少額でA社の実質的経営者となることができ、以降はA社の株式配当をB社が受け、その配当をもとにB社は借金返済をしていきます。
図にするとこうです…。
「持株会社なんて、都会の大企業のこと…」と思われるかもしれませんがそんなことはありません。
今は地方でも・中小企業でも、事業承継の方策の一つとして多く使われている方法です。
この方式で注意すべきポイントは…、
①既存事業会社は安定した収益力があり、持株会社に対して配当が可能であること
②持株会社は、正しく算定された「時価」で、現社長から買い取ること
③持株会社に資金調達能力があること
④顧問税理士・商工会議所等が、頼りになる相談相手があること
…でしょうか。
それでも、家族・親族・従業員から後継者が作れない場合にどうしましょう…。
そうなると考えるべきは「M&A」です。
ということで、次回は「M&A」についてお話ししていきましょう。
【事業承継⑥】「納税猶予」の注意点!
昨日、「相続税・贈与税における自社株の納税猶予」についてお話ししました。
まだまだ利用者は多くはありませんが、“上手な事業承継への選択肢の一つ”としてご紹介はしていっていただきたいと思います。
今日は、従前からの「一般措置」と追加された「特例措置」の違い、そして利用時の注意点を列記しておきます。
★「一般措置」と「特例措置」の違い
①「一般措置」では全部の株式を対象とすることはできませんでした。上の表のとおり、総株式数の3分の2までという制限がありましたが、「特例措置」ではこの制限が撤廃されて全株式までを対象とすることができます。
②「一般措置」では、「承継後5年間は、従業員数を8割維持しなければならない」という要件がありました。この雇用維持要件、「特例措置」でも残ってはいますが、商工会議所等の経営指導を受けていくなどの策を講じることで、「弾力化」の表現のとおり事実上の撤廃となりました。
③「一般措置」では「1対1」(…現社長から後継者1人)にしか認められませんでしたが、「特例措置」では「複数の株主から最大3人の後継者」の場合にも使えるようになりました。
④「一般措置」では相続人にしか使えず、他人が後継者の場合には使えませんでしたが、「特例措置」では「後継者が相続人でない場合」にも使えるようになりました。
…まとめて言うと、「多くの要件が壁になっていた」のが、「壁が撤廃されて100%使えるようになった」ということです。
これをもって「自社株の相続・贈与問題は完全になくなった」と言っても過言ではないくらいだと思います。
ただし、注意しなければならない点もあります。
★利用時の注意点
①「特例措置」を受けるためには、令和5年3月31日までに県知事の承認を得ておかなければなりません。そのうえで、令和9年12月31日までに事業承継を実行しなければ「特例措置」を受けることはできなくなります。
県知事の承認を受けるための方法は、税理士・商工会議所・商工会に相談してください。
この「期限」については、今後の税制改正で延長される可能性もありますが、現時点では上記のとおりですので注意してください。
②対象は「中小企業」でなければなりません。規模が大きくなって「中小企業」でなくなったり、上場企業となると対象にはなれません。
また、「風俗営業会社」や「資産管理会社」は対象になれません。
③「特例措置」によって継続要件は緩和されましたが、後継者がその後に株式を売却したりすると、猶予されていた贈与税に利子税まで上乗せされて求められる場合も生じます。
親⇒子⇒孫…と、代々引き継いでいくのであれば何の問題もないのですが、何が起きるかわからないのが企業経営です。
「猶予してもらえなくなるケース」については、税理士・商工会議所・商工会等から教えてもらい、しっかりと覚えておかなければなりません。
この「事業承継税制」は、毎年の税制改正で注目されるポイントであり、直近では「個人事業」でも同様な優遇措置が加わりました。
今後も、追加・改正・延長などの“手”が加わっていくといくと思われますので、そんなニュースには注意していきましょうね。
【事業承継⑤】事業承継税制「納税猶予」を知りましょう!
前回に続き、会社(自社株)を“あげる”場合を考えていきます。
前回は、「毎年少しずつ贈与していく場合(暦年贈与)」と、「暦年贈与と売却の組合せ」をお話ししました。
暦年贈与については、基礎控除(110万円)を生かしていくことが肝心ですが、注意すべきなのは「計画的に・年数をかけて…」行わなければならないということです。
でも、社長さんが既に高齢という場合、“まだまだ始まったばかりなのに相続が発生してしまう…”というケースもあるでしょう。
国としても、そんなケースを考えながら、「円滑に事業承継ができるように」と考えて、税制面での特別扱いを作ってくれています。
それが「事業承継税制」です。
詳細は国税庁のパンフレットがこちらですのでごらんください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201905/01.pdf
広く「事業承継税制」というと、自社株の評価額をどうするかという「民法合意」も含まれるかと考えますが、今日はそこは割愛して、「相続税・贈与税における納税猶予」についてお話しします。
面倒くさそう…? そうですよね、税制のことですから上記のパンフレットを見ても細かな文字がいっぱいで、なかなかイメージはしにくいかと思います。
でも、皆さんのお客様である事業所にも、この税制を活用したら大きなメリットがあるという企業も多くあると思いますので、ここはしっかりと理解していってください。
ではまず、言葉から解きほどいていきますね。
「相続税・贈与税における納税猶予」ですから、「相続・贈与」どちらの場合にも使えるんだなという点、そして「納税猶予」ということは「免除」じゃないんだなという点、ここに気づいてください。
相続時・贈与時ともに使えるわけですから、現社長が亡くなった時だけでなく、事業承継を計画していこうという、まさに今も使えるということです。
逆に、誤解しちゃいけないのは「免除」じゃなくて「猶予」だということです。
税制面で優遇してもらえることには間違いないのですが、「猶予」というのは“待ってくれている”ということですから、将来は払うことになるんだなというイメージを持っておいてください。
…「猶予」が「免除」になるポイントは別途お話しします。
この「納税猶予」、一言で言うとこうです…。
「現社長の全株式を後継者に譲っても、贈与税は1円もかかりません!」
…いかがですか?
前回ご紹介しましたような「自社株が数億円の評価」になっている企業では、相続時も贈与時も高額な税金を覚悟しなければならないところ、全く税金かからないで後継者にバトンタッチできるわけです。
「そんなうまい話には落とし穴が…」と考えちゃいますよね。
ここで理解しておかなければならないのは、「落とし穴」ではないものの「注意点」が何点かあるということです。
この優遇措置を受けるためには…、
①中小企業であること
②代表者であった現経営者から、代表者である後継者への贈与であること
③令和5年3月末までに「計画書」に基づいて県知事の承認を得ておくこと
…が必要です。
「あれ?、従業員の数を減らしちゃいけないとか、他にも面倒くさい条件があったはず…」と思われた方もあるかな?
そうなんです、以前はこうした条件がまだまだ複数あったのですが、この「条件あり」を「一般措置」と位置付けて、「条件を大きく緩和した」扱いを「特例措置」として加えた形にしたのが今現在なんです。
…お役所のやりそうなことですね、言い回しは複雑になりましたが、要は「特例」をちゃんと理解すればOKです。
結果的に、この「納税猶予」を、親⇒子⇒孫…というように代々続けていけば、何代承継しても税金かからないままで会社を引き継いでいけるのですから、私はとっても良い制度(特例)を設けてくれたと考えています。
なのに、実はこの制度、あまり使われていません。
なぜ? 考えられる理由は二つ、一つは「まだみなさんよくご存知ない」ということ、そしてもう一つは「税理士さんが勧めない」ということです。
税理士さんが乗り気でないのは、「納税猶予されていることを、いつまでも覚えておかなければならない」のが面倒だということのようです。
この税制を活用するためには、顧問税理士さんを味方にすることは必須ですから、壁は分厚いかもしれませんが、会社を経営しているのは社長さんであり税理士さんではありません。
現社長がじっくりと考えて、自社での活用メリットをしっかりと相談していく姿勢が大切だと思います。
そして、皆さんが税理士さんと対決することではなく、社長さんに向けて「こんな方法もありますがご存知ですか?」という情報提供の立ち位置であることも間違えないでくださいね。
次回も、もう少しこの「納税猶予」に関して掘り下げていきます。
【事業承継④】自社株を「あげる」場合…
前回、会社(=自社株)を「あげる」のか「売る」のか…というお話しをしました。
では、今日は「あげる」の場合に、税金等がどうなっていくのかをお話ししますね。
まず、「あげる」わけですから、現在の所有者(=現社長)の手元には何も入ってこないということはご理解くださいね。
永年かけて育て上げてきた会社、当初の出資額(資本金)の何十倍にもなっているケースは決して少なくはありません。
そんな大切な財産を「あげる」わけですから、まずこれは息子さん・娘さん等の親族が後継者になる場合ですね。
「あげる」側には、何の税務も発生しませんが、大変なのは「もらう」側です。
贈与税というのがなかなか高い税率だというのは、なんとなく皆さんもご存知だと思いますが、仮に自社株の評価が1億円だとして、これを贈与するとどれだけの贈与税になるでしょう…。
細かい計算は割愛しますが、国から求められる贈与税額は“約4,800万円”です。
1億円に対して約半分ですよ!
さらに考えてください、この税金、納めるための現金って、どこから持ってきます?
もらった株式は売り買いできるものではなく、言うなれば“単なる紙切れ”のようなものですね。そしてお父さんもお元気な状態での贈与ですから、生命保険金が入ってくるわけでもありません。
息子さん(娘さん)としては、不安いっぱいで社長業をスタートさせるときに、数千万円もの納税資金を準備しなければならないわけです。
現実には、“いきなり全額を生前に贈与”するケースはあまりないでしょう。
親御さんとしても、贈与税ができるだけかからない状態で譲っていくことを考えます。
その際に多く使われるのが「暦年贈与」です。
贈与税では、「年間110万円」の基礎控除がありますから、“毎年110万円分”の自社株を贈与していけば、その年の贈与税は発生しません。
これを数年間続けていけば、10年で1,100万円、20年で2,200万円、30年で3,300万円という単純な計算ができます。
前述の会社のように1億円の総額ならば91年…、いつになったら事業承継は完了するんでしょうね。
でも、こうして地道に暦年贈与されている社長さんは多いのですが、私はこんな提案をします。
「社長、毎年110万円分では、あまりにも年数がかかりすぎますね。年に310万円にされたらどうですか?、この場合は基礎控除110万円を引いて、課税対象は200万円。これだと税率は10%ですから相続税と比較しても最も低い税率です。税額20万円ということは、実際に贈与された310万円に対しては6.45%ですよ。
これを続けていけば、3年で930万円、10年で3,100万円分の贈与ができますよ。」
…と。
「基礎控除以内で…」と考えられている方は多いですが、「310万円以内で…」という利点をご存知の方は少ないですから、ぜひ皆さんから教えてあげてください。
そして、この方法にはもう一つのメリットがあります。
基礎控除以内で贈与する場合、税金が発生しませんから「贈与税の申告」もしませんね。あたりまえと思われるでしょうが、これを数年重ねた段階で、突然税務署から“遡っての否認”をされてしまったらどうします?
そこを毎年310万円にして、当然申告・納税をきちんとしておけば、遡っての否認なんて心配はいらなくなります。
この“安心感”というのも大きなメリットです。
では、事業承継期間を10年で計画していくとしますね。この間、毎年300万円分を暦年贈与していけば、累計で3,000万円分の贈与ができます。
でも、仮に評価が1億円だとすると、まだ7,000万円分が残ってますね。
これをどうしましょうか…。
「確か、相続時精算課税って制度を使えば2,500万円までは贈与税かからないって聞いたことあるけど…」って思いました?
確かに、相続時精算課税制度というのは、早いうちに・多額の財産を無税で贈与できるというメリットはありますが、これには以下の注意が必要です。
①贈与時には課税されないけど、将来相続が発生したときには相続財産として加算されるので、安易に無税で贈与できると考えてはダメ。
②相続時精算課税制度を使うと、その後の暦年贈与に「110万円の基礎控除」が使えなくなってしまい、“やりなおし”はできません。
私は個人的には相続時精算課税制度はお勧めしていません。
やはり暦年贈与の道は残しておいたほうが良いと思うのでね。
…そうすると、この事例ではどうしましょうか。
10年間の暦年贈与を続けながら、部分的かつ計画的に後継者が「買う」という道との組み合わせというのも考えられますね。
後継者としても「自己資金を投入している…」という自覚を持って経営にあたってもらうためにも、“全部あげる”のではないというのも一考かと思います。
そしてもう一つ、ここで使えるのが「事業承継税制」です。
ここまでお話ししてきた“事業承継が進まない問題”というのは国も課題視していますので、「税制面で優遇してあげることで、事業承継を後押ししよう…」という趣旨で作られた税制です。
更に、今では「特例」部分も加わっていますので、正しく理解して活用していくことも上手な経営です。
では、次回はここをお話ししていきますね。
【事業承継③】「お金の問題」って?
円滑な事業承継を目指した時、クリアしなければならない“2つの壁”が「後継者の壁」と「お金の壁」とお話ししました。
では、幸い「後継者の壁」はクリアできたとします。お子さん等、親族の中から…、意欲を持った従業員の中から…、いずれにしても、積極的な意思を持った後継者ができたわけです。これはまず喜ぶべきことですね。
では、その人に経営をバトンタッチするというのはどうゆうことでしょうか。
印刷屋さんに新しい社長の名刺を作ってもらうこと?
取引先に「今日から彼が社長ですから…」と言って回る事?
法人登記において「代表取締役」として登記すること?
…どれも大事なことではありますが、これでは事業承継が完了したことにはなりません。
これだけでは「経営の承継」はできても、「資産の承継」ができていません。
この状態で完了したつもりでいたら、その後に現社長が死亡したときにどうなるでしょうか。
代表権はなくても、会社の自社株のほぼ全てを持ったままで死亡したとすると、それは全て相続財産となります。
以前、鳥取の企業さんの事例では、資本金1,000万円の自社株が、評価3億円にもなっていました。その時点での社長さんは既に経営から退かれており、ご自宅での療養中でした。会社の経営は後継者である息子さんがなされていたのですが、自社株の85%は現社長が持たれていたままでしたので、このままお父さんが亡くなられた際には「約25,000万円」の相続財産が、相続税の対象となることをお話ししました。
専務さんからは「そんな評価になるはずがない、3倍の3,000万円なら納得できるが、3億円にもなるはずがない。」と言われ、そこから先は話もできませんでした。
ところがその2日後、専務さんから電話が入り、「税理士に計算させたら、あなたに言われたとおりだった。このままでは相続税を払うために会社が潰れてしまう。どうしよう?」ということでした。
長い歴史とともに堅実な経営を重ねてこられた会社であれば、“数億円”の評価になっている会社は珍しくはありません。
皆さんの担当されている企業さんにも、「これだけの評価になっていながら、何の問題意識ももっていらっしゃらない…」という先は多くあるはずです。
では、どうすればいいのか…。
答えは、「計画的かつ円滑に自社株を後継者に譲り、資産の承継を完了させる」ことです。
…というと簡単な一言になってしまうのですが、現実にはこれが大変なんです。
前述の例ならば、「約25,000万円の自社株を譲る」ということですから、一大事業ですよね。
この“譲る”という行為、実際には①「あげる」のか、②「売る」のかの方法は二つです。
①の場合には、“もらった”側には贈与税の心配が生じますし、現社長の手元には何も残らなくなってしまいます。
逆に、②の場合では、現社長の手元にはしっかりとお金が入りますが、“買う”側にはその分の資金が必要です。
この「お金の問題」をクリアするためには1年~2年の話ではなく、10年程度の期間をかけていくことが肝心です。
このために、「事業承継には長い期間が必要」だとも言えるでしょう。
息子さん・娘さんなどが後継者である場合には①、従業員さんなど他人さんが後継者である場合には②となるのが基本でしょうね。
では、この①「あげる」・②「売る」に分けて、それぞれの注意点や、上手な方法を考えていきましょう。
【トピックス】「はたらく細胞」ご存知ですか?
今日は横道にそれてのトピックスです。
先日、テレビの情報番組で紹介していた漫画、「はたらく細胞」って知ってます?
複数の番組で紹介していましたから、知ってるよ~という方も多いのではないでしょうか。
私は、テレビ見ている最中にアマゾンで検索、速攻で5巻セットを購入しちゃいました。
夜にポチッと押した翌日には品物が届いたというアマゾンさんの速さはさておき、今日はこの本をご紹介しますね。
一言で言うと、「体内の細胞を擬人化し、身体の中で細菌やウイルスに対して、各細胞がどうやって戦っているか…」を漫画にした物です。
メインの登場人物(?)は赤血球と白血球、新人赤血球ちゃんが広い体内で迷子になりながらも一生懸命にはたらく姿、そしてイケメン白血球くんが、赤血球ちゃんの危機を助けながら、多くの細菌やウイルスを撃破していく展開、ここは漫画ならではです。
5巻の内容とキーワードをまとめてみました。
どちらかというと、体外からの細菌等に、自身の免疫機能として白血球・キラーT細胞・NK細胞達が戦う姿なので、薬・手術・放射線等の医療行為は登場しませんが…唯一、熱中症の輸液注射くらい…、各細胞の役割や、身体の構成・仕組みは本当にしっかりと書かれています。
文章で読んでいたら途中でギブアップしそうな内容ですが、漫画になることであっという間に5冊を読み切ってしまいました。
保険を生業にされている皆さんには、ぜひ知っておいていただきたい内容、読んでみていただきたい内容です。
お薦めします!
ホームページはこちら↓
【事業承継②】なぜ事業承継で壁にぶつかるのか…?
株が上がり続けますね~!
日経平均が3万円を突破し、今日は500円くらい下がるだろうな~って思ってましたが、なんとも今日も上がって終わりましたね。
・コロナ新規感染者数が落ち着いてきていること
・アメリカ大統領のバトンタッチが無事に進んでいること
・世界中でワクチン接種が進んでいること
…こんな要素を考えると、ここしばらくは更に上向く要素しか考えられず、これが逆に怖いくらいですよね。
さてさて、どう進んでいくのか…、
でもね、投資運用を考えられる方は「長期・分散・平準」という三原則を忘れないでくださいね。
こんなときこそ、「ちょっと待てよ、三原則から外れていないか…」と自身に問いかけて、冷静に判断していってくださいね。
話を本題に戻しますね。
前回は「60歳を超えた社長さんの平均年齢」というお話しをしました。
高齢化が進む日本ですから、社長さんの年齢が高くなっていくのはあたりまえのことかもしれませんが、同時に考えていかなければならないのは「不老不死の社長はいない」ということです。
1年進めば、社長は1歳歳を重ねています。それが60歳~70歳~80歳と進んでいくと、申し訳ありませんが心身ともに弱くなっていってしまいます。
これが1社だけのことではなく、日本経済を支えている中小企業全体で起きていることですから、このままでは会社・従業員・取引先・顧客・それぞれの家族にまで影響してくる重い問題です。
本来ならば、計画的に事業承継が進み、社長が替わろうとも、その会社は揺らぐことなく、更に新たな発想で成長していく…、こんな姿になりたいですよね。
では、なぜ事業承継がうまく進まないのか、いくつになっても“社長であり続けなければならない”のか…、この「障壁」を整理してみましょう。
私が思うに、理由は大きく二つ、「後継者」の壁と「お金」の壁です。
日本政策金融公庫が行ったアンケートによると、「社長さんの約半分は自分の代限りでの廃業を考えている」という答えが50%もありました。
その理由は大きく3つ、
①当初からそう考えて起業した
②事業の成長が見通せない
③適当な後継者が見つからない
…この3点がそれぞれ三分の一づつを占めています。
①はしょうがないとしても、②は経営のやりようで解決できる可能性がありますね、さらに③は何とかしたいですね!
今、経営に問題なく、従業員は元気に働いている。顧客も安定して喜んでもらっている。社長もやりがいを感じて、この会社を愛している。…なのに後継者がいないから廃業せざるを得ないというのでは、もったいないですよ!
後継者となりうるのは次の三者です。
①息子・娘・親戚等からの「親族内」
②従業員・取引先等からの「親族外」
③会社売却・合併等による「Ⅿ&A」
…①のメリットは、
・各方面からの納得が得られやすく、スムーズに進む
・社長の思い、経営理念などを伝えやすい
…などが考えられ、まずは家族・親族の中から候補者を選び、教育することが最善です。
でも、家族・親族に該当者がいないとなると、②の道、“他人さん”の中から考えなければなりません。一生懸命働いている従業員さんの中には、「会社を自分の手で発展させたい」と思っている人もいるのではないですか?
上手くその人に繋いでいくことができれば、会社も顧客も守っていくことになりますね。
ただし、その場合には、会社を“あげる”のか・“売る”のか、ここを考えなければなりません。“あげる”となると、現社長にとっては何も自分の手には残らないことになってしまいます。なので、“売る”という姿になるわけですが、今度は後継者は「買うための資金」が必要です。
経営が順調である会社ほど、その“値段”は高くなるものであり、一般従業員では「到底そんな資金はありません」となってしまいますね。
…これは「後継者問題は解決できても、お金の問題が解決できない…」ということですから、これは次回に回しますね。
そして、家族・親族・従業員・取引先、どこにも後継者となりうる人がいないという場合、多くはそれで廃業となっているわけですが、ぜひそこに③の「Ⅿ&A」という道も考えてみてください。
以前、仕事上でお付き合いのあった税理士さんなのですが、この人、家業であるお醤油屋さんを一旦引き継いだのですが、どうしても税理士の道に進みたくて、会社をM&Aで売却しました。
その時点で会社を廃業手続きしていたら、ほぼプラマイゼロの状態で終わっていたわけですが、長い歴史があるからこその財産(固定資産・ノウハウ・ブランド・顧客網)がありましたので数千万円で売ることができたんです。
もしこのとき、単に廃業としていたら、昔からのお客さんは悲しみ、技術を持った従業員さん達もまた新たな勤め先を探さなきゃいけなかったですね。
更に、新たにその地域で・その事業を始めようと思う人は、歴史もブランドもない中でゼロからスタートしなければなりません。
Ⅿ&Aによって全ての人が助かり、現経営者には数千万円のお金が残ったわけです。
Ⅿ&Aというと、なんとなく「乗っ取り・買収」というネガティブなイメージがあるかもしれませんが、うまく「縁結び」ができれば、これは皆が幸せになれる手段でもあるんです。
長くなりましたが、まずは①の家族・親族の中から考えること、次に②、そして③というように考えていけばいいと思います。
お金の問題、信頼できるⅯ&A業者探しなど…、課題はまだまだありますが、まずはどの道に進んでいくかを、現社長としてはしっかりと考えていくことが肝心です。
「事業承継には10年かかる…」なんて言う人もいます。
ベストな事業承継を、考え・準備し・教育していくためには、確かに10年は必要かもしれません。
だからこそ、社長が元気で、バリバリと働いているうちに、10年後・20年後を考えて、それをきちんと言葉にしていくべきだと思います。
【事業承継①】社長さんの高齢化進む!
本日、帝国データバンクから興味深いニュースが発表されました。
状況・方向性とも、想像はついていたとはいっても、実際に数値としてつきつけられると、やはり一段と重たく感じさせられますね。
報じられたのは、「社長の平均年齢が初めて60歳代に突入した」というものです。
まずは図でご覧いただくと…
…ということです。
これは全企業の平均値であり、規模的に差を見ていくと、上場されている大企業では58.7歳ということですから、法人の大半を占める中小企業では60歳を更に上回っているということですよね。
また、この数年の推移を見ると、1990年では54.0歳でした。ほんの30年、毎年上がり続けて、ついに60.1歳になったわけです。“平均年齢”ですから、本来はこんなに大きく動く数値ではないはずです。
地域によっての格差はどうでしょう。
★最も高いのは秋田県で62.2歳。逆に最も低いのは三重県で58.8歳。その差約4歳!
★都会が比較的低く、地方ほど高い!
★概ね“東高西低”、東日本のほうが高い!
★30年前と比較して高くなっているのは秋田・青森・山梨・沖縄・千葉県など。7歳以上高くなっているのが16県!
…こんなところが読み取れます。
では、そんな企業の事業承継進行度はどうでしょう。
この10年では大きな差はないようですが、1990年頃には100社中5社、2000年から2010年頃には100社中4社強、そして2010年以降は100社中4社弱というように、徐々に低下していることが読み取れます。
『事業承継がうまく進まない⇒現社長が居続けるしかない⇒社長の平均年齢が高まる』という構図ですよね。
先日、私も広島県内の企業さんに呼ばれて、事業承継についてのアドバイスに伺ってきました。
従業員20人ほどの金属加工業、創業社長は67歳、幸い息子さんが後継者として育っているので後継者問題はないものの、自社株のバトンタッチ、事業に接することのない娘への相続、現社長の以後の生活など、心配事は多岐にわたりました。
日本中にこんな企業はたくさんあるはずです。
「そろそろ考えなきゃな~、でも何から考えればいいんだろう?」
「心配事はいろいろあるけど、全部税理士に聞くのもおかしいし、誰に聞けばいいのかな…」
「自社株贈与すると、すごい贈与税になるらしい…、そんなの払えないし…」
「まあ、今のところは先送りにしておくか…」
…これが社長さん達の頭の中だと思います。
でも、こうして先送りにしておくだけでは、確実に社長さんは歳を重ねていきますし、歳とともに健康上の課題は重くなっていきます。
何の手立てもせず、ある日突然倒れてしまい…、これでは残された家族・従業員・取引先・顧客は困ってしまいます。
そんな悲劇にならないよう、「何を」「いつ頃」「どのように」手を打っていくか…、幅広いアドバイスができていけばいいですね。
日本経済を支えているのは中小企業です。
各地の中小企業が、元気で・適切なバトンタッチができていくように、「事業承継」をテーマにしてお話ししていきたいと思います。
コロナ禍に上がり続ける株式相場?
新年第2号です。新しい年に明るい話題を書きたいのですが、日本での新型コロナウイルス感染拡大は止まるどころではなく、爆発的拡大と言えるニュースが続きますね。
「ウィズコロナ」という言葉をはき違えないようにしましょう!
このまま進むと、ほかの急病や交通事故で救急車のお世話になろうとしても、どこにも行き場がないなんてことにもなりかねません。
慣れてしまってはダメ、「感染しない・感染させない」ための細心の注意が求められている今です!
さて、コロナ関連では世界中で厳しいニュースが続いているわけですが、同時に経済面のニュースを見ると“株式市場の高騰”が報じられています。
時短営業・店舗閉鎖・売上低下・倒産…、経済は決して良い状況にはないはずなのに、なんで株価は上がっていくんだろう…って疑問に思いませんか?
不思議ですよね。
今日は、この理由を考えるとともに、今年これからの見通しをたててみましょう。
…といっても、私ごときの私見ですから、そのとおりにならなくても許してくださいね。
まずは、世界中でコロナの影響が出始めた2020年3月から約10カ月間、2021年1月8日までの日本とアメリカの平均株価の推移をグラフにしてみましたのでご覧ください。
このグラフは、2月末の株価に対しての推移です。
ロックダウン・緊急事態宣言等で不安感が高まり、日本では3月19日に0.78倍、アメリカでは3月23日に0.73倍まで低下しました。
しかしその後、アメリカでは3兆ドルもの支援策や、日本では緊急事態宣言の解除・Go-Toキャンペーンのスタート等によって、5月下旬にはプラスに転じました。
その後、“無事”に大統領選挙ができたこと、予想以上に早くワクチンができたこと、米中の関税合戦が納まりをみせたこと、…などの要因から日米ともに株価は上昇を続けています。
世界経済の方向性は、なんといってもアメリカと中国の関係が大きく(私見)、トランプさんのままに“対中国関税戦争”を続けていたら、今の状況はなかったでしょうね。
そして、日本の株価はニューヨーク市場の動向のままに翌日上下していると言っても過言ではないでしょうから、これもまた米中関係納まりの賜物だと思います。
結果的に、3月からの10カ月間で、日本では1.33倍、アメリカでは1.22倍になっているわけです。10カ月間で20%~30%増える金融商品なんて考えられないですよね。
でも、これが現実ですから、コロナ禍に“株式相場で大儲けした”という人も少なくないでしょう。
といっても、明日の保証がないのが株式市場です。この勢いで上がっていくのか…、はたまた急降下してマイナスになってしまうのか…、誰にも断言はできないですよね。
そんな中での「要素」をピックアップしてみると…
①バイデン政権の方向
…税政策、エネルギー等へのインフラ投資など、アメリカ経済のかじ取りがトランプ政権とどう変わっていくのか。
②米中関係
…トランプ政権当時の貿易戦争は回避できるとしても、関係は改善されるのか。
③新型コロナウイルスワクチン
…世界での接種進捗と効果は期待できるのか。
④菅政権での2021年予算
…コロナ対策・経済対策に“将来への不安払拭”は期待できるのか。
…開催はできるのか、そしてその経済的効果は。
こんなところがポイントになると考えます。
今は各国ともに「金融の量的緩和」によって貨幣流通量が大きく、さらに国債利回りが低いので株式市場にマネーが流れ込んでいます。
上記①~⑤が、ともに良い方向に進んでくれれば、市場はさらに高いリターンを示すでしょうが、新型コロナウイルスの今後次第では、逆のリスクが勝ってしまうことにもなりかねません。
世界での感染拡大の今後、そして上記①~⑤については、注意深く見守ることが必要ですね。
ちなみに、株式市場がこんな動き(10カ月)をしているので、各投資信託ファンドも同様です。
単一銘柄まで選ぶことができない私たち一般市民にとっては、「世界株を中心に」とか「日本株を中心に」という“大まかな方向性”を指示する形の投資信託は、低金利の今、まさに活用すべき制度だと思います(変額保険も同様です)。
あけましておめでとうございます
明けましておめでとうございます。
1年前、2020年のお正月を思い出してみると、確かに新型コロナウイルスの感染は、中国等で始まっていましたが、「まあインフルエンザみたいな…」とか、「外国のことだよな~」とか、「それよりもオリンピックが楽しみ!」…なんて考えていませんでした?
偉そうに言う私も、「まあ、夏までは心配かな~」程度の認識でした。
ところがどっこい、1波・2波・3波と続き、治まる様子がありませんね。
これまでは飲食店のクラスターなど、ある程度根源がイメージできましたが、今回は違いますね、職場・家庭内と考えていくと、なんとも大きな網が日本地図にかかってしまっている気がします。
なのに、なのに…、今回は皆さん心配度が低いのではないです?
テレビの街頭インタビューに答える若者達を見ていると、「コロナ?関係ないし…」と答える男性、「もう慣れちゃったから…」と答える女性、何が関係ないのか、何に慣れたのか、実にボキャブラリーの無さに呆れます。
では、最初に緊急事態宣言でみんなが外に出かけなくなったときと比べると何が違うんでしょうね。
思うに、最初は我が身を心配して自粛したものの、身近に感染者がいない・感染しても治ってる…、という積み重なりで「まあ大丈夫」という思いが強くなってきたのでしょうかね?
ということで、コロナに限らず、「死亡者数の月別推移」はどうなんだろうと調べてみました。
結果がこのグラフ…
「ほらね、毎月そんなに変わらないじゃん!」
「またまた、怖がらせようと思って赤い矢印なんか書いて!」
…って思いました?
確かに10月までを見ると、今年が突出して増えてはいないですね、でも次にこのグラフを見てください。
…いかがです? こうなるとショッキングじゃないですか?
12月、いきなり1千人以上も増えているんですよ!
「関係ない・慣れちゃった」と答えた彼らは、このグラフを見ても同じように答えるのでしょうか?
ワクチンも治療薬もまだまだこれからです。
今、自分ができることを真剣に考えてみましょう。
仮に「日本国民全員が2週間家から一歩も出ず、誰とも接触しなかったら…」、理論的にはウイルスは消えてなくなるはずですよね。
今年のお花見をマスクなしで楽しむために…、オリンピックで世界中から観客を迎えるために…、安心して旅行・帰省ができるために…、今を我慢しましょう!
関係あるんです! 慣れちゃダメなんです!
お正月最初というのに楽しいお話しじゃなかったですね。
では次回は、「なのに上がり続ける株式相場!」についてお話ししましょう。
<老老相続③>早く資金循環をする「特例」を3種
少々日があいてしまいましたが、11月に財務省が公開した資料にもとづいて続けます。
これは、財務省として相続・贈与の現状を分析し、これから将来を見据えたときに、何が問題になるのか、そして諸外国との対比はどうなのかをまとめたものです。
これがすぐに税制改正につながるというものではありませんが、ざっくりと今後の方向性を示唆しているものだと思います。
そしてさらに、財務省という公的な機関が作った資料に「老老相続」という言葉が使われたということにも注目です。
最近では、「老老介護」⇒「認認介護」⇒「老老相続」なんて言葉が生まれています。
介護が切実になっている今、介護される人もする人も高齢者で認知症、さらに亡くなられた際も、高齢者から高齢者への相続になっているということです。
世界一の高齢社会である日本において、どれも切実な問題ですね。
では、「老老相続」を考えた時、何が問題になるかというと、“個々の資産が塩漬け状態になり、資金循環にならない”…という点です。
その下の若い世代では、結婚・子育て・住宅・教育等のお金に困っていても、高額になる贈与税を考えると、祖父母からの支援がしにくく、結果として高齢者の口座の中で塩漬けになってしまうわけですね。
国としては、経済政策の観点からも循環させたいわけで、今も税制上の「特例」という形で支援をしています。
(⇒先日書きました「2021年度税制改正大綱」でも着目しているポイントでしたね。)
では、今ある「特例」制度から、今日は3点ご紹介しておきます。
一表にまとめてみると…
…こんな感じです。
子・孫が教育を受け、結婚子育てをし、マイホームを手に入れるというイベントに、親・祖父母が資金面での支援を贈与税の心配なくできるのであれば、まさに塩漬けとなっている資産を“生かす”ことができるわけです。
表をご覧いただくと、年齢の制限・期限・非課税限度額等、微妙に異なりますから注意しなければなりません。
また、この表だけでは書ききれない注意ポイントもまだまだありますので、詳しくは国税庁のホームページ(下記)でパンフレット等を確認してください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/01.htm#a-10
“資産を持っている親・祖父母”と、“資金に困っている子・孫”を結び付けてあげる制度です。
知らないままではもったいないですよ!
日頃の活動において、情報提供の一つとしてお使いください。